VRで、高度な医療技術を多くの人へ
一方、Holoeyesは、現役外科医とVRアプリのエンジニアがタッグを組んで2016年に起業。医療用画像処理ソフトウェア「Holoeyes MD」を開発し、医療技術の向上に貢献している。Holoeyes MDは、CTやMRIで撮った画像を最短10分で3Dモデル化するソフトで、VRヘッドセットを装着すれば臓器など術野の立体データが空間で手に取るように映し出され、手術前の会議やトレーニングに活用できる。
Holoeyes MDのデモンストレーション。身体内部の3D映像を手でつかみ回転させて、さまざまな角度から見ることができる。
Holoeyes MDは、医療用画像処理サービスとして日本で唯一、医療機器認証を取得しているため、病院で実際に使用してもらい、エビデンスを確立することができたという。ビジネスマネージャーを務める中村和弥は、事業のビジョンをこう説明する。
「VRによるシミュレーションは、学生や若手医師のトレーニングにも役立っています。多くの医師が知識・知見を得られれば、限られたベテランしかできなかった職人技というフィールドを開放できる」
Holoeyesビジネスマネージャーの中村和弥。外科医とVRアプリを得意とするエンジニアの出会いが迅速な開発に結び付いたと語る。
東京都の支援を実績作りに
トリプル・ダブリュー・ジャパンとHoloeyesは、ともに、東京都が実施するスタートアップ支援策「キングサーモンプロジェクト」に採択された企業。同プロジェクトは、有望なスタートアップに対し、東京都が都政現場への導入や海外展開などを支援する事業だ。
新しい技術を広め、改善していくにはユーザーのフィードバックが不可欠だが、医療・介護の世界では機器の導入に対するハードルが高い。トリプル・ダブリュー・ジャパンとHoloeyesは、それぞれ東京都の支援を得て都立病院で使用実績を重ねることができ、これが大きな飛躍につながったという。海外での販路も拡大し、急成長する東京発のスタートアップに、投資家からも熱い視線が注がれるに違いない。