しかし「顧客はAIではない。ほとんどの人はアンケートに答えず、多くの人は何か覚えていることを書き込むだけだ。その結果、企業には誤りがあるデータが残ることになる」と同氏は語る。
同じく2018年、コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーが米国の消費者5000人以上を対象に、サブスクリプションサービスに関する調査を行ったところ、「脱落率は高く(40%近い)、消費者は隅々まで行き届いた体験を提供しないサービスをすぐにキャンセルする」ことがわかった。
マッキンゼーのレポートは「消費者はサブスクリプションを本質的に好んでいるわけではない。定期的に契約しなければならないことで需要は損なわれ、顧客獲得はより困難になる」と結論づけている。
何人かの学術関係者も、個々の購入者のデータを集めることにともなうリスクについて書いている。消費者にとって自分の靴のサイズや好きな色を店が知っていることは役に立つかもしれない。しかし、AIとアルゴリズムが集めたデータに、避妊薬の購入記録が入っていたら何が起きるだろうか?
長年小売業界に関係している人なら、「物事がいくら変わっても、本質は変わらない」という古い格言を思い出すだろう。AIは物流、在庫管理、その他企業経営のさまざまな問題を解決する強力なツールだ。消費者の行動を予測する場合、中には価値あるものもあるが、それは正しく使えばの話だ。
小売業者には、消費者が何を求めているかを知るための実績ある方法がある。貴重な資産を投入する前に、商品と価格の消費者テストを行うことだ。過去の行動に基づくデータをいじりまわしたり、機械学習に基づいて消費者のサブグループのプロフィールを「収集」するよりも、小売業者はリアルな買い物客からリアルタイムで集めたリアルな情報を使うことで、トレンドや将来需要をもっと正確に予測できる。そして、もしアルゴリズムを使うなら、それが繰り返し役立つことを証明できる必要がある。