2018年、業界ニュースサイトのRetailDive.comは、StitchFix(スティッチ・フィックス)の創業者・CEOであるカトリーナ・レイクを、「ディスラプター・オブ・ザ・イヤー(この年に破壊的な活躍をした人物)」に選んだ。スティッチ・フィックスは3900人のパートタイムスタイリストたちが集めた商品のサブスクリプションサービスを提供するファッションサイトだ。ハーバード・ビジネス・レビューの記事で、レイクは自身の会社は「データサイエンス事業」であり、売上は「同社のアルゴリズムによるすばらしいレコメンデーションに依存している」と説明した。
スティッチ・フィックスは、いわゆるサブスクリプションボックスリテイラーと呼ばれる業種のわかりやすい例の1つだ。美容製品小売業のバーチボックス(Birchbox)は、過去の購入履歴と消費者を年齢、居住地、その他のデータを利用してカテゴライズするアルゴリズムに基づく商品を「選択」して利用者に送る。カット済みミールキットサブスクリプションサービスのBule Apron(ブルーエプロン)も注目すべき参入例だ。
2021年初め、上場から3年が過ぎたスティッチ・フィックスの時価総額は、100億ドル(約1兆3500億円)にも上った。
1年半後となる現在、株価は約95%暴落し、同社は2017年の上場以来初めての売上減少を報告すると予想されている。
一方、ブルーエプロンはさらに悲惨な投資事故案件になっている。1株当り140ドルでデビューした同社の株価は、現在4ドル以下で取引されている。
なぜ破壊者たちは破壊されたのか?
結局のところ、危険の兆候は2018年時点で明らかにされていた。Quartz.comに掲載された記事で、MIT(マサチューセッツ工科大学)工学部の科学研究員ルイス・ペレス=ブリーバは、「多くの小売業者は、顧客を本当に助けるものが何か忘れている。店内での人間による助言だ」と警告した。
ペレス=ブリーバによると「機械学習(人工知能、AI)向けにクリーンなデータを集めるために、多くの企業は顧客に送るアンケートを、コンピュータが処理しやすいかたちにしている」という。