管理職は必要か? オランダの企業が示す「働きやすい」職場のヒント

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2006年、デ・ブロック氏と3人の同僚看護師は、患者の自立支援に看護師が専従できるようにすることを目的に、オランダの医療制度の簡素化に着手しました。

1つのチームからスタートし、各地域で自律組織化された870の自律型チームへと急速に拡大し、このモデルは24カ国で展開されています。

ビュートゾルフの「玉ねぎモデル」は、患者・利用者の幸せを中心に考えられています。同社のウェブサイトには、「専門職は、利用者とその生活状況に合わせた支援を行います。その際には利用者の生活環境、周囲の人々、家庭でのパートナーや親戚、インフォーマル・ネットワーク(家族、友人や近所との人間関係)を考慮すること」と明記されています。

12名で構成される看護師を中心としたチームが、利用者のニーズに合う解決策を、利用者とともに策定。解決策は各利用者のフォーマル・ネットワークやインフォーマル・ネットワークにより異なってきます。チームは自分たちで仕事の進め方を計画し、責任を分担し、決定を下すのです。

国際会計事務所KPMGが2012年に発表したケーススタディーでは、ビュートゾルフがケアモデルを変更したことで、「ケアの時間を50%短縮し、ケアの質を高め、スタッフの仕事満足度を高めた」ことが明らかになりました。

デ・ブロック氏は次のようにコメントしています。

「どのように学び、どのように職場に貢献するかを、労働者が自己決定できるようにすることで、人々がさらに柔軟に働けるようにすることが必要です。従業員自身が、オーナーシップがあると感じると、職場でより活躍するようになるはずです。40~50年に及んだトップダウン思考は多くの人々にとって有害なものでした。オランダでは、200万人が鬱症状を抱えています。職場環境によって鬱を患うことは、世界全体の大きな課題であると思います。職場環境を改善することで、人々の幸福感、生産性、柔軟性が高めることができるのです」

ヘルスケアにおける人材不足の危機


2016年、世界保健機関(WHO)は「保健医療人材の世界戦略:労働力2030(Global Strategy on Human Resources for Health: Workforce 2030)」を発表しました。

2030年までに保健医療分野でおよそ4000万人の雇用が創出される、とWHOは試算しています。同報告書では、4000万人の大半は中・高所得国の人材であり、低所得国では1800万の人材不足となるとしています。

ビュートゾルフの手法は国レベルで生産性を30%向上させる可能性があると、デ・ブロック氏は述べます。この手法を取り入れると、人材不足の課題に対処でき、将来の医療従事者に魅力的な環境を提供できるようになります。
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文=Kate Whiting

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