「私たちは、教師や医療従事者が実施しなければならない、官僚的で非常に複雑な制度を多く作ってきました。(しかし)この機会を利用すれば、生産性の高いサービスを提供できるのです」と、デ・ブロック氏は続けます。
「どの経営学修士課程(MBA)も同じことを教えているように、私たちは戦略的経営や運営管理などについて考えることが必要です。しかし、それは今の世の中には当てはまりません。若者たちは、魅力的な仕事を求め、仕事に意義を感じたいのです。若者の希望を満たすことができれば、人材は育ち、生産性も高まります。
20~30年後には、多くの国々で70歳以上の高齢者が倍増するため、仕事の手法を変えなければ高齢者をケアする人材が得られなくなるでしょう。人口統計を見てみると、状況はどの国でも同じです。医療従事者の不足や、制度の失敗はすでに始まっています。人材活用の柔軟性を向上させる制度に変えなければなりません。また自主性、自由、オーナーシップをより一層医療従事者に持たせることで、魅力的な職場を作ることが必要です」
賃金の引き上げがもたらす成果
デ・ブロック氏は、「ビュートゾルフではスタッフの満足度と責任感は、常に高く維持されています。これは報酬が高いことにもよりますが、その他の理由もあります」と述べています。
「私たちは(医療従事者に)報いようとしているでしょうか。彼らの処遇改善を考えているでしょうか。この数年間、彼らの給与水準は抑えられてきました。ビュートゾルフでは賃金の引き上げを実施したことで、高い成果が得られたのです。効率と効果について、間違った思い込みをしているのです。効率を追わないようにしたことで、高い効果と結果が得られました。
ビュートゾルフはスタッフに、オランダでの最高レベルの給与を支払っていますが、同業者からは『ビュートゾルフが賃金の引き上げを実施すると、プレッシャーを感じる』という声を多くいただきました。私は『いいえ、みなさんも同じようにできます。ただし、組織構造を変えなければなりません。架空の役割を担う管理職を減らし、より多くのスタッフに本来の活動に専念させるのです』と答えました。
過去50年間、私たちはあまりにも細かく分業化し、作業効率をさらに悪化させてきました。医療制度や教育制度を見るとわかるように、あらゆる作業は細分化され、最終的な結果ではなく、個々のプロセスや作業にばかりに焦点が当てられているのです。
ですから、結果に注目してさまざまな役割を統合すれば、仕事はずっと魅力的、効果的になり、少ない人員でこれまで以上の活動ができるようになるでしょう。