「背もたれ不足」問題も
もちろん、完璧なトイレなど存在しない。ここまでは車椅子用トイレの一般的な話をしてきたが、広さの基準以外に、トイレに求められることは多種多様である。まず、バランス感覚に問題のある人が特に案じているのは、多くのトイレには寄りかかれるようなタンクや背もたれが付いていないことだ。
次に、トイレの名前が問題を引き起こす原因となりえる。万人向けのトイレを言葉で表現すれば、そう、誰でも使えるトイレ、ということになる。ただし、そうすると、使わなくても良い人が利用してしまうこともあるのだ(注)。
最後に、日本だとこの手のトイレのドアはたいてい自動開閉式で、緑のボタンで開き、赤のボタンで閉まるようになっている。ボタンは、トイレの内側と外側にある。外側のボタンはドアの開閉だけで、内側の「閉」のボタンを押すことでドアもロックされる。
ところが、トイレに入るときに、外側の「閉」のボタンを押す人がいるが、これだとドアはロックされないままだ。さらに大きな問題となるのが、トイレから去るときだ。内側のボタンはドアの近くにあることが多いため、去り際に、内側のボタンを押してドアを閉めようとする人がいる。つまり、誰もいないのにドアにロックがかかり、職員が開けるまで使えなくなってしまうのだ。
注:国土交通省は、車いす利用者など用のトイレが、本来の対象者以外に使われているケースが相次ぐ状況から、建築物のバリアフリー設計のガイドラインを改め、その呼称を「だれでもトイレ」、「多目的トイレ」から「バリアフリートイレ」に変えることを促していくという。