サイト閉鎖で情報消滅、その前に。Webコンテンツの永久保存を考える

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では、なぜ意図しない、そういった「言論制限」が起こるのか。理由の多くは情報を維持することにお金がかかるからであろう。無料掲示板や無料ホームページ、メディアを維持する裏には、何かしらのビジネスモデルが動いている。加えて、サービスを運営するソフトウェアの保守やメンテナンスのコストも負担せねばならない。ドメインやサーバの維持には、元来コストがかかっている。

コスト負担なきところに維持なし。喩えるなら「墓じまい」に近い。面倒を見る人がいなくなった情報は墓に行くのではなく、墓自体がなくなるのだ。

ただ、冒頭の「〜情報・コンテンツを残す手段はあるのだろうか」の答えとして、たとえば、古くは先にも述べたInternet Archiveの「Wayback Machine」、最近では「Web魚拓」や「Evernote Web クリッパー」といったサービスを利用してページを保存しておけば、万が一プラットフォームがサービスを終了した後でも情報を閲覧することは出来るだろう。

だが、今後、インターネット上の情報・コンテンツを「保存」するためには、どんな道があるのだろうか。期待を込めて考えたのが以下の3つである。

1. NFTによる生き残りへの道


2021年3月、ジャック・ドーシーによる世界初のTweet(投稿)が、約290万ドルで落札された。

情報に値段が付いたという点において、この意味は大きい。落札されたTweetはNFTにより「本物」であることが保証されている。保有者の意図によっては、今後、世界初の本物のTweetを見るには、対価を払わなければいけないかも知れない。

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インターネットにおいて、文字や文章の引用は画像の引用に比して、緩い傾向があるように思われる。これからの時代(Web3の時代)は、過去の文字や文章の引用に対して適切に課金できるようになるかも知れない。情報・コンテンツを維持するコストの原資が捻出できる可能性があることは、大きな転換点を予感させる。

2. 事前の売却(証券化)による生き残りへの道


2020年12月、ボブ・ディランが自らの楽曲の著作権を数億ドルで売却した。

真意はディラン本人しか分からないが、様々な意図があったであろう。創造者たる著作権者が存命中に著作物の価値を確定し、その価値の対価を受け取る。存命中に対価を使って社会貢献することも可能であるし、死後に意図しない使われ方や無用な相続争いを避けることもできる。

翻ってインターネットの情報・コンテンツはどうであろうか。

今後、現在掲載されているインターネットの情報・コンテンツが、第三者から見て、将来的に収益を生むと判断できれば、事前に買い取ることにより(証券化)、その第三者が新たな著作権者となって、その情報・コンテンツを残していくこともあるだろう。

折しも日本政府は著作権者が不明の著作物の利用について、2023年の通常国会での法改正を検討している。著作権者が不明の場合は一時的な窓口を作り、事後に見つかった場合はその利用料を還元する仕組みなどを検討しているという。

一方、著作権者は著作権者(本人)が所在不明となる前に価値を確定し、その対価を事前に受け取る流れが出る可能性も大いにあるように見える。
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文=曽根康司 編集=石井節子

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