I型IFN自己抗体とCOVID-19死亡率の関係
マンリー博士らは、COVID-19の重症度とIFN型自己抗体の有無との関係を調べるために、COVID-19で死亡したワクチン未接種の患者1261人の血液サンプルと、パンデミックの前に集められた3万4159人の血液サンプルを調査した。年齢層にかかわらず、死亡したCOVID-19患者の20%にはIFN-α、IFN-ω、IFN-βに対する自己抗体が血中に含まれていた。一般的な保有率が、70歳未満の一般人口では1%、70歳以上の一般人口では4%であることと比較すると、その差は歴然だ。
研究者らはこれらのサンプルを用いて、I型インターフェロン自己抗体保有者と非保有者の年齢層別の感染致死率(IFR)と相対的死亡率(RRD)を評価した。
まず、低濃度のIFN型自己抗体(100pg/mL)しか持っていない人の相対的死亡率を評価した。彼らは主にIFN-α2とIFN-ωに注目した。自己抗体非保有者と比較すると、死亡の相対的リスクが顕著に高かった。
特に70歳未満の患者では、自己抗体の存在は、非保有者と比較して死亡の相対的リスク(RRD)の増加と強く相関していた。I型IFN自己抗体の他の組み合わせでも結果は同じだった(図1)。
図1。各種のI型IFNを中和する自己抗体を持っている人の持っていない人に対する相対的死亡リスク(RRD)を年齢群別に示した。左側が自己抗体の濃度が低い場合(A)、右側が濃度が高い場合(B)。(CC4.0参照元:Proc Natl Acad Sci U S A. 2022 May 24;119(21):e2200413119. doi: 10.1073/pnas.2200413119.)
70歳以上のIFN型自己抗体保有者の相対的死亡率は、同年齢の非保有者よりは高いものの、70歳未満の保有者に比べると相対的死亡リスクは低い。これは直感に反するように思われるが、高血圧などの共存症を含む、高齢と相関する他の死亡危険因子がより大きく寄与することから疫学的に説明できるだろうと著者らは述べている。
細胞レベル、分子レベルでは、高齢になると自然免疫系と適応免疫系の両方が全般的に弱まり、血液や気道におけるIFN免疫の特異的な低下も見られる。つまり年齢とともに、I型IFNに対する自己抗体が、COVID-19の死亡率へ寄与する割合は小さくなっていくのだ。