新型コロナ重症化、年齢以外の最大リスクファクターは「自己抗体」

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SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)に感染したとき、大多数の人は喉の痛み、発熱、倦怠感などの、軽度から中程度症状で済む。だが、感染者の一部は重症化する。たとえば過剰な炎症、免疫異常、深刻な臓器障害などだ。このような場合、入院が必要になることも多く、気管内挿管を行うこともある。

国際研究グループは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の予後を予測するための新たな指標となる、I型(いちがた)インターフェロン(IFN)に対する自己抗体を発見した。米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたマンリー博士らのこの研究は、集中治療室(ICU)のベッドや人工呼吸器などの限られた資源を、最もリスクの高い患者に優先的に提供し、より効率的に治療を行うことを可能にする。

インターフェロンと自己抗体とは?


私たちの免疫システムは、微生物の脅威から私たちを守るために役立っている。それは大きく自然免疫と適応免疫の2つに分けられる。自然免疫系は最初に反応するもので、感染後すぐに発動する。この反応は一般化されていて、侵入してきたあらゆる微生物に反応する。一方、適応免疫系は、侵入した病原体に対する特異性を獲得するのに7〜8日かかり、初感染から15日程度でピークに達する。一度この特異性が確立されると、次に同じ病原体に出会ったときに、すぐに行動を起こすことができるようになる。

自然免疫に重要な特徴が、インターフェロン反応だ。細胞は侵入者を検知すると、信号伝達タンパク質であるインターフェロンを産生する。インターフェロンが作られると、さまざまな抗菌物質、遺伝子、タンパク質が嵐のように放出され、異物を攻撃し、菌などの増殖に都合の悪い環境が作り出される。

インターフェロンには3つのタイプ(型)がある。I型インターフェロンは、ほぼすべての種類の細胞の表面に存在するインターフェロン-α/β受容体(IFNAR)という受容体に結合する。これは、ウイルスのゲノム複製を妨害するタンパク質の生産を促進する。

ヒトは5種類のI型インターフェロン(IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κ、IFN-ω)を生み出すが、一部にそうしたI型インターフェロンに対する自己抗体を生み出す人がいる。抗体とは、適応免疫反応の一環としてB細胞によって産生される抗菌タンパク質である。普段は外敵から身を守ってくれている。だが時には、私たちの免疫システムが、誤って自分自身の健康な組織、細胞、タンパク質を脅威と見なし、これらの健康な組織を攻撃する抗体の産生をするようになる場合がある。

このような抗体は「自己抗体」と呼ばれる。I型インターフェロンに対する自己抗体が生まれることで、私たちのインターフェロン反応が妨げられ、自然免疫系の弱体化につながる可能性がある。
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翻訳=酒匂寛

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