残り物には福がある。「あまった糸」を服に変えるライテンダーとは

(左から)インターソナー代表の澤木雄太郎、「RYE TENDER」ディレクターの小池勇太


残糸の在庫状況からデザインを「逆算」


ライテンダーがつくる服は、ユニセックスで着用できるベーシックな日常着。ニットをメインに据えたのは、澤木の得意分野であったことに加え、小ロットでも生産しやすいからだ。

デザインは残糸の在庫状況から「逆算」する。まず、工場から送られてきた残糸の写真やサンプルを見て、使用できそうな糸かどうかを判断する。次に、試編みをしながら、その原料に最適な編み地を模索。その編み地をつかって、小池がデザインを考えていくのだ。


残糸のサンプル。余数などが書かれている

「ニットは糸の太さや編み方を変えるだけでさまざまな表情に変化するので、一種類の糸からイメージを膨らませて、様々な形や質感の製品をつくることができる点も魅力です」(小池)

ただ、当然ながら糸は色や種類によってあまっている量にバラつきがあるため、その点も考慮してデザインする必要がある。例えば「MERCER LONG-TEE」は、少しずつあまった糸をムダなく活用するため、それぞれを組み合わせてつくったマルチボーダーの柄を編み上げて使っている。


「MERCER LONG-TEE」(税込1万円)

商品が売れ残るとアップサイクルの意味がないので、「売れる」商品をつくることも大切な要素だ。そのため、入手した原料が差し色のような色しかない場合は、黒などのベーシックな色に染めて活用することもある。色の選択肢を保つことは、製品の売れ残りを減らすことにもつながる。

現在はD2Cモデルで、販売チャネルはECサイトと不定期で開催するポップアップイベント。アイテム数が増えてきたこともあり、今後は卸売りも視野にいれていく。

「コロナ禍でユーザーの購買行動も変化しているので、既存の売り方をベンチマークするのではなく、新しい方法を考えています。海外向けの卸も小さくはじめてPDCAを回し、少しずつ伸ばせると良いなと考えています」(澤木)

「みんなが参加できるブランド」へ


澤木は、商品を製造・販売するだけでなく、少しでも長く大切に着てもらうために、「ストーリー」の発信にも力をいれている。

「元々、服を大事に使ってもらうことができれば、簡単に捨てられないのではないか、という思いがありました。その服がどうやってつくられているか、どんな人たちの手を通って今ここにあるのかを知っていれば、大切にしてくださるんじゃないかと。それを、ブランドとして説明していきたい」
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文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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