その要因のひとつが、他社ブランドの製品を製造するOEM事業で、仕入れた原料(糸や布など)の量と受注量が合わず余剰在庫が出てしまうケース。
例えば、あるブランドの製品の量産を予定して原料を確保したものの、数量の変更などで使われないこともある。それらは衣類になることなく、産業廃棄物として焼却処分されてしまうのが一般的だが、そこには、単に「あまりもの」という言葉でまとめることができないほど良質な原料も存在している。
こうした「残糸」を製品化できないか──。商社でOEM事業を担当していた澤木雄太郎は、そんな思いを胸に抱いていた。
質の良い製品を手ごろな価格で提供できる?
2020年10月、澤木はかねてからの思いを実現する形で、ニットブランド「RYE TENDER(ライテンダー)」(運営会社:インターソナー)を立ち上げた。ディレクターに小池勇太を迎えて、二人三脚でのスタートだった。
小池と出会ったのは、2013年のニューヨーク。商社時代に行った海外研修中に、自身もインターンをしていた現地のアパレルブランドで知り合った。小池は服飾専門学校を卒業後、片道切符で渡米し、同じブランドで働いていたのだ。
澤木が先に帰国したことで一旦関係は途切れたが、小池の帰国を機に再会。澤木がOEM事業を手掛ける「インターソナー」を創業したタイミングだったこともあり、「一緒にブランドをやろう」と誘い、ビジネスパートナーとなった。
ブランドを立ち上げるにあたって思い出したのが、「あまった糸」の存在。
「全国の工場には、品質に問題がなくても生産ラインに乗らなかった原料がたくさんあります。それらを使えば、質の良い製品を安く提供できますし、アップサイクルも実現できると考えました」(澤木)
こうして、「ライテンダー」のコンセプトは、“残糸・残布のアップサイクル”と決まった。ブランド名は、残りものを意味する英語「LEFTOVER」の対局にある言葉が「RIGHT UNDER」ではないか、という言葉遊びから着想したという。