科学誌ネイチャーに研究結果を発表したハーバード大学医学部とボストン小児病院、米食品医薬品局(FDA)の研究者からなるチームは、過去に感染した子どもや若者たちに「ワクチン接種が必要であることを改めて示す結果」だと説明している。
オミクロン株に感染した場合、ワクチン未接種の子どもや若者が重症化、または死亡する確率は大幅に高まっている。感染した未成年者が、高リスクのその他の人たちにさらに感染を広げる危険性もある。だが、成人が再び感染する可能性がすでに確認されている一方、未成年についての研究は、これまで、あまり行われていなかった。
今回の研究では、いずれもワクチン接種を受けておらずに感染した177人を、5歳未満、5~11歳、12~21歳の3つのグループに分けて調査した。対象としたのは、入院の必要なく回復した感染者と、入院した感染者(小児多系統炎症性症候群:MIS-Cを発症した患者を含む)。
研究チームは感染者それぞれの血清・血漿サンプルを用い、従来型の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 WA1)と変異株(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン)に対する中和抗体の量を調べた。
その結果、入院が必要になった5歳未満の小児の抗体価は、5歳以上の感染者よりも低くなっていた。また、入院の必要がなかった感染者とMIS-Cを発症した感染者の抗体価は、コロナ感染のみで入院した感染者よりも高かった。重症化した感染者のうち、2019年以前に感染者が確認されていた季節性コロナウイルスへの抗体を持つ人はいなかった。
この調査の限界について研究チームは、抗体反応について調べたのみであり、T細胞の産生など、その他の測定方法を用いた調査を行っていないことだと認めている。
感染者の3つのグループにはいずれも、抗体に交差反応性(1つの抗体が類似した複数の抗原を認識する能力)の低下がみられた。特にオミクロン株に対して、中和作用が弱まっていた。一方、過去の感染とは異なり、2回のワクチン接種は5つの変異株すべてに対する抗体量を増やしていた。
過去の感染は、その後の感染を防ぐものではないといえる。だが、米国では、現在までに2回のワクチン接種を受けた子どもは5~11歳の29%、12~17歳の59%にとどまっている。
新型コロナウイルスの変異株の中には、あと1、2回の変異で致死率を大幅に高めたもの変わり得るものもあるかもしれない。ウイルスが進化を続けるなか、私たちはいまも、極めて不安定な状態に置かれている。