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2022.06.17 15:00

「人を変える」ために必要なことは? 自分らしさを発揮する多様性社会の実現に向けて

星賢人(左)と海音(右)

星賢人(左)と海音(右)

5月13〜15日にかけて、恵比寿ガーデンプレイスで開催された「MEET YOUR ART 2022 “New Soil”」。「国内最大級のアートとカルチャーの祭典」と銘打たれた新しい時代の横断的カルチャーを取り上げた本イベントのステージでは、新しい時代をつくろうとチャレンジを続ける次世代の活躍を応援するForbes JAPANとテレビ朝日による共同プロジェクト「FUTURE TALENT PORT」から、3つスペシャルトークセッションが行われた。

本稿ではそのひとつ、Session2「正しい理解と変革精神をまとう世の中へ」の内容をお届けする。

本セッションに登壇したのは、LGBTフレンドリー企業と当事者を結びつける求人サイトを展開するJobRainbow 代表取締役CEOの星賢人と、義足モデルとして東京オリンピックパラリンピックにパフォーマーとして出演したモデルの海音。モデレーターは経済キャスターの瀧口友里奈氏が務めた。

セッションはふたりの来歴と活動の紹介からスタート。ゲイ当事者である星は中学2年生で自身の性的指向を自覚するも、学生時代にいじめの被害者となるなど、さまざまな困難に直面した。その後、大学在学時にLGBTサークルの代表を務めるも、親交のあったトランスジェンダー女性が就職活動中に社会の不理解による逆風を受け、就職を諦め大学を辞めるという現実を目の当たりにする。

そして2015年、東京大学大学院在学中にビジネスコンテストの優勝を機に、実姉と共にLGBT就活支援サービス「JobRainbow」を創業した。

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一方の海音は5歳からモデル活動を始めるも、12歳で難病の「多発血管炎性肉芽腫症」を罹患し、右足の膝から下を義肢とせざるをえないこととなった。手術前後は芸能活動を休止。薬の副作用で体重が30kgも増加して、人と会うのを避けたくなるほど過酷な時期だったという。

義足を初めてつけるときも痛くて泣き叫んだが「歩きたい」という想いが強く、驚くようなスピードでリハビリをこなして退院。しかし当時、義足となったことは隠すと決めていて、友人にも気づかれないよう必死に振る舞っていたという。

そんな彼女を変えたのは18歳のとき。義肢装具士の臼井二美男に新しい足をつけてもらったことをきっかけに、パラアスリートらを撮影する写真家の越智貴雄と出会い、同氏の写真集『切断ヴィーナス』への出演を打診されたことだった。彼女を訪れた越智の「義足をハイブランドのように格好いいものにしたい」という言葉に、「またモデルもやりたかったし、(義足者の)憧れの存在になれたらいい」と考え、モデル復帰を決意した。

だが、友人や周囲に自身が義足であると打ち明けることには不安もあった。当時について、「かわいそう」と思われるのが嫌で、隠しておいたほうがいいのかと勝手に思っていた、と海音は話す。

当事者が隠していたことを自分から表明する"カミングアウト"(元々はゲイ社会から生まれた言葉である)には勇気が必要だったのでは、という問いが投げかけられる。海音氏は義足であることを友人らが構えずに自然と受け入れてくれたこともあり、「一歩踏み出してからハッピーだった」と明るく答えた。
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text by Michi Sugawara|photographs by Kayo Igarashi|edit by Yasumasa Akashi

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