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2022.06.16 16:00

「個人の夢や変えたい景色が次の未来につながる」若手起業家ふたりがSDGsを自分ごとに出来た理由

村木風海(中央)と平原依文(右)


しかし、中国語での授業に成績が振るわなくなった平原。そんな彼女をひとりの教師が気にかけ、興味があることから学んでいくことを勧めた。授業中も平原に付き添い、好きだったアニメ『クレヨンしんちゃん』中国語版のビデオを一緒に見て、中国語を自分のものとしていった。
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こうした経験から、平原は個人の興味や志ざすものを軸とした教育の重要性を理解し、それを世界中に展開しようと、WORLD ROADを設立することとなる。この時の教師とは、「WeChat」を通じて現在も毎日交流しているという。

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続いて、世界最先端の気候工学・二酸化炭素直接空気回収分野に取り組むCRRAを創設した村木も、小学校低学年時にいじめ被害に遭っていたことを明かした。勉強熱心だったことを理由にいじめを受け、担任教師からも暴力を受けるという状況のなかで、両親の働きかけもあり4年生の時に私立小学校へと転入。
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引っ込み思案だった当時、自分を変えたいと思っていた村木に、祖父が手渡したのがイギリスの理論物理学者ホーキング博士による子ども向け冒険小説『宇宙への秘密の鍵』だった。小学生の主人公が人類の一番住めそうな星を探して、いろんな宇宙を旅する本作のなかでも、村木は火星での「赤い砂漠に青い夕陽が沈んでいった」という記述に惹かれた。

そのとき、「僕は絶対に火星に行きたい。最初に火星に降り立つ人間になる」という決意を抱き、火星の研究を始めることに。火星の空気で95%を占める二酸化炭素について学びはじめ、小学生ながら独自の実験などを開始した。

最初から地球温暖化といった環境問題について考えていたわけではなく、研究を進めていくうちに「二酸化炭素が可愛く思えてきた」と笑う村木。

中学2年生のときには、「科学の本をプレゼンする」という授業で出会った気候工学の専門書からも大きな影響を与えた。科学の力で地球温暖化を止めようとする同書を読んだ村木は「地球を守り、火星を拓く」というテーマを掲げる。当時、気候工学の専門家は海外に5人ほどで日本での専門家は皆無。そのため、村木は日本での同分野のパイオニアとなるが、指導教官からは研究を止めるよう言われるなど、長い間逆風のなかを進んできたと話す。

現在、地球温暖化は世界で排出される二酸化炭素量を2050年までに0にしないと物理的に止まらないとされている。しかし、人類の活動に伴う二酸化炭素排出量を0にするのは不可能だ。

そこで、村木は高校2年生のときにスーツケースサイズの二酸化炭素直接回収装置「ひやっしー」を発明。空気中の二酸化炭素量を低減することで、地球温暖化に歯止めをかけようとしている。この技術を応用して、大規模な二酸化炭素直接回収装置の開発にも着手。2030年までに「ひやっしー」を世界中に配りたいと語る。

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text by Michi Sugawara|photographs by Kayo Igarashi|edit by Yasumasa Akashi

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