2020年にフォーブスの「30アンダー30アジア」に選出されたAmiの共同創業者でCEOのジャスティン・キムは以前、韓国のフィンテックアプリ「Toss」の運営元のビバ・リパブリカ(Viva Republica)に勤務していた。一方で、同社のCTOのベクナザール・アブディカマロフ(Beknazar Abdikamalov)は、アマゾンに勤務していたため、2人とも過酷な企業カルチャーには馴染みがある。
今から4カ月前にベータ版のプロダクトを立ち上げたAmiは先日、メタの新製品実験チーム(NPE)を含む投資家から300万ドル(約3.9億円)のシード資金を調達した。フェイスブックの親会社であるメタが、アジア太平洋地域のスタートアップに投資を行うのは、今回が初めてだ。
NPEは4月に、ナイジェリア最大の都市ラゴスにある既存の拠点に加え、ソウルの新オフィスで採用を開始すると発表した。
今回のAmiのシードラウンドには、メタに加え、カカオやクーパンを支援する既存出資元の「グッドウォーター・キャピタル」らが参加した。
世界保健機関(WHO)の3月のレポートによると、パンデミックが引き金となり、世界中で不安やうつ病が25%増加したという。また、シンガポールの国立衛生研究所の2021年の統計によると、一般的な6つの精神疾患から生じる従業員の欠勤や生産性の低下などの社会的コストは、年間12億ドルにのぼるという。
Amiは、アジア全域の企業にメンタルヘルスのプラットフォームを提供し、優秀な人材の獲得を支援しようとしている。創業者のキム自身も、2019年に全般性不安障害(GAD)と診断された経験を持っており、ストレスを抱える人々の気持ちが理解できると述べている。
「恥の意識」の問題に取り組む
しかし、Amiのようなスタートアップは、アジア全域に蔓延するメンタルヘルスに対する恥の意識の問題に直面している。2020年に発表された中国、香港、日本、シンガポール、韓国、タイを対象とした調査結果で、この地域では精神疾患が個人の弱さと捉えられる傾向があることが判明している。
キムは、この問題に対抗するために、メンタルヘルスではなく「メンタルウェルネス」という言葉を用い、誰もがその恩恵を受けられるようにしようとしている。Amiのトライアルを行ったユーザーの少なくとも40%が、2カ月後にはこのプラットフォームを利用しているという。
「私たちは、企業がPRのために購入し、そのまま放置されるようなサービスにはなりたくないと考えている。当社が最も重視しているのは、Amiのソリューションを実際に利用し、長期間にわたって利用し続ける従業員を増やしていくことだ」と、キムは語った。