このデマがほのめかしているのは、元コメディアンのゼレンスキーがこれほど大きな富を得られたのは汚職を働いたからに違いない、という見方だ。デマはツイッターの一般ユーザーのみならず、著名人も拡散。ロシア国営メディア、ラジオ・スプートニクの米国人司会者リー・ストラナハンは自身のフォロワー10万人に向け、「ゼレンスキーがビリオネアなのはなぜ?」とツイートした。
フォーブスは、ゼレンスキーがビリオネアではないと断言できる。ロシアの侵攻により、ウクライナの富豪の資産は大きく減少した。本誌が今月発表した最新の世界長者番付では、ウクライナ人ビリオネアはわずか7人に減っており、ゼレンスキーはその中に含まれていない。チョコレート事業で財を成したペトロ・ポロシェンコ前大統領も、今年の番付から姿を消した。
だがゼレンスキーはポロシェンコと違い、ビリオネアだったことは一度もない。フォーブス・ウクライナの推定による現在の資産額は多くても2000万ドル(約26億円)。その大部分を構成するのが、劇団「クバルタル95」の株式25%だ。大統領就任の際にパートナーに移譲されたが、退任時にはゼレンスキーの手元に戻る可能性が高い。
クバルタル95は、ゼレンスキーが大統領に当選する高校教師を演じた人気政治コメディードラマ『国民のしもべ』を制作し、その権利を保有している。同作はネットフリックスで2017年〜21年に配信され、今年3月からは再配信が始まった。同作が生む収益は年間推定3000万ドル(約39億円)で、ゼレンスキーの持ち分は1100万ドル(約14億円)となる。