衛星データで温室効果ガスの漏出を検知
せりか:Satellogicは「衛星データの民主化」を目指しているとおっしゃっていましたね。民主化を進めるなかで、特に社会に貢献できていると感じている分野は何かありますか?
トーマスさん:Satellogicだけでなく、地球観測事業者の全体での話になりますが、気候変動や温室効果ガスの排出量のモニタリングについては、かなり貢献できていると思いますよ。
せりか:世界中でカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが加速していますから、気候変動や温室効果ガスの排出量のモニタリングは需要が高まっていきそうですね!
トーマスさん:特に今後ニーズが高まっていきそうなのが、温室効果ガスの漏出検知です。工場やパイプラインなどから、メタンや硫黄酸化物が漏れ出ていることをデータ解析より検出できると考えられています。ハイパースペクトルセンサは、鉄が酸化してできるサビを発見できるので、温室効果ガスが漏出する予兆も解析できるかもしれません。
せりか:2021年10月に開催した「WARP STATION Conference Vol.1」では、愛知県豊田市・上下⽔道局で⽔道の維持管理を担当されている職員の方に、衛星データを用いた漏水の検知についてお話していただきました。その際に、人員と予算が限られているなかで、全ての管理区域を点検しに回るのは難しいとおっしゃっていました。
工場やパイプラインも衛星データを活用できれば、頻度高く点検できるようになるので、温室効果ガスの漏出量を削減できるようになりそうですね!
トーマスさん:そうですね。持続可能性の観点で私たちが重要視しているのは、アクセシビリティ——つまり、衛星データの付加価値をどれだけ多くの人が享受できるかということです。Satellogicが今、力を入れているのは政府向けですが、今後は個人向けにも衛星データやソリューションを提供し、持続可能な社会の実現に貢献していきたいと思っています。
ハイパースペクトル×医療でできること
せりか:これまでにこの連載企画に登場していただいたゲストの皆さんは、衛星データがリアルタイムにダウンロードできるようになれば、事業や社会貢献により役立てられそうだとおっしゃっていました。Satellogicでは、衛星データをより早く地上でダウンロードするために、何か技術的な工夫を行っていますか?
トーマスさん:はい。例えば、Amazonの「AWS Ground Station」を活用して、衛星データを迅速に地上に下ろし、AWS上でデータを直接分析・処理することで、レイテンシ(遅延時間)を削減しています。
宇宙空間にある衛星の機数が増えて、データを頻繁に取得できるようになってきたことで、実務で利用するユーザーが現れて「さらに更新頻度を上げてほしい」と要望が出るようになったのです。その要望に対応するために、衛星間通信や光通信を活用しようとする動きが出てきています。