モスクワの女性とSNSで会話。「ウクライナ人だけじゃない、ロシア人も国を離れている」

ロシア、クレムリンの街をのぞむ / Getty Images

戦争の影響はITやデジタル領域にも及び、マッチングアプリが本来とは違う使われ方をするケースも見られる(ティンダーが通信手段に。ウクライナ人男性「怒りしかない、戦地へ行きたい」参照)。

欧米で広く使われているマッチングアプリのバンブルは、ロシアとベラルーシでのアプリのダウンロードを停止したが、マッチングアプリの草分けとも言われるティンダーは、ロシアでもウクライナでもサービスを継続している。また、ロシアとウクライナでは、デート相手を見つけるというデフォルトのアプリの目的とは違う使われ方、国境を超えたコミュニケーションにアプリを使うケースが増えている。

自身のスマートフォンにティンダーをダウンロードした筆者は、特定の地域の人と繋がることができる「パスポート機能(有料)」を使って、ウクライナのキーフに続き、ロシアのモスクワの人たちともマッチングを試みた。

筆者は取材目的で、プロフィールをバイセクシャルという設定にしたので、モスクワ在住の男性とも女性ともマッチした。

そんな中、30代後半でPRの仕事をモスクワでしているというマリア(仮名)が、「喜んで私の経験を話すよ。私はプーチンは支持していない」とメッセージをくれ、現在の生活や気持ちについて詳しく語ってくれた。

tinderアプリ
Boumen Japet / Shutterstock.com

ロシアのテレビのプロパガンダはうまく機能している、残念ながら


筆者:戦争が始まってから、モスクワでの生活はどう変わったか。

マリア(仮名):戦争が始まってから、仕事はぐっと減った。アートのPRの仕事をしているが、ほとんどのプロジェクトがキャンセルされたり延期されたりしたので、今一つしかプロジェクトがない。それもキャンセルされるのは時間の問題だろうと思う。

戦争が始まってから最初の数日から1週間は、ドゥームスクローリング(ネットで悲観的な情報を読み続けること)したり、パニックになったり、フリーズしたりしていた。今は、自分の仕事を少しでもやるようにしながら、難民に衣服や食べ物、衛生用品を届けるチャリティー基金を手伝ったりしている。短期間のことと、家族が一緒にいられることに集中している。

今大問題なのは、多くの家族が、親と子供の間、違う世代などの間で、現在の状況について正反対の見方をしていることだ。残念ながらロシアのテレビのプロパガンダはうまく機能していて、自分の両親がそれに影響されないように努力している。

コンスタントに、国を出る決断をした人たちのお別れ会がある。ロシアをすでに離れた友達も多く、そういう友達とはズームで会話していて、まるでロックダウン時に戻ったような感覚になる。
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文=高以良潤子 編集=石井節子

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