モスクワの女性とSNSで会話。「ウクライナ人だけじゃない、ロシア人も国を離れている」

ロシア、クレムリンの街をのぞむ / Getty Images


筆者:ロシアやウクライナ以外の国の人に何か望むことはあるか。

マリア:ロシア人の全てが現在起こっていることを支持しているのではないことを理解してほしい。多くの人が、公に自分の意見を言って逮捕されたり罰せられたりしている。

全体主義(個人の自由を認めず、個人の生活や思想は、国家全体の利害と一致するよう統制されなければならないとする思想または政治体制)になりつつある中で、(政府の)抑圧下にある制度は機能しているが、それに立ち向かおうとする動きもまた、機能している。「平和」と言っただけで、またはトルストイの「愛国主義は奴隷制だ(patriotism is slavery)」を引用しただけで逮捕されたりするような信じられないケースに象徴されるような国の制度は、中から腐敗していく、と信じたい。

──また、彼女は日本文化に興味と尊敬の念を持っており、アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞した映画「ドライブ・マイ・カー」を見に行く予定だという。村上春樹が原作で、ロシアの劇作家チェーホフによる演劇が出てくるところに興味があり、楽しみにしている、と語ってくれた。

ティンダーではロシア人の男性と多数マッチしたが、多くはロシア語で話しかけて来て、こちらが英語に切り替えて欲しいとお願いすると、マッチを解消されるケースが多かった。また、会話が英語で続いた男性もいたが、シンプルにデート相手を探しているから、戦争のことは話したくないと言われたケースもあった。

このインタビューは、多数マッチした中で現在の状況や気持ちを詳細に聞くことができた一つのケースに過ぎないが、本人の言葉通り、ロシア人全員が戦争を支持しているわけではないが、実際にプロパガンダを信じている人も多数いるというモスクワの状況を知る一助になればと思う。

戦勝記念日に関する参考記事(英語):https://www.forbes.com/sites/jamesrodgerseurope/2020/06/24/russias-victory-parade-a-reminder-of-wwii-glory-and-new-challenges/

高以良潤子◎ライター、翻訳者、ジャーナリスト、外資系企業プログラムマネジャー。シンガポールでの通信社記者経験、世界のビジネスリーダーへの取材実績あり。2015年より米国系大手EC企業勤務。インストラクショナルデザイナーを務めたのち、現在はプログラムマネジャーとして、31カ国語で展開するウェブサイトの言語品質を統括する。

文=高以良潤子 編集=石井節子

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