モスクワの女性とSNSで会話。「ウクライナ人だけじゃない、ロシア人も国を離れている」

ロシア、クレムリンの街をのぞむ / Getty Images


筆者:SNSは現在どのように、何を使っているか。

マリア:今ニュースソースのメインはテレグラム(コミュニケーションアプリ)だ。奇跡のごとく機能していて、独立系のメディアやジャーナリストによる投稿を読んでいる。フェイスブックは(ロシア政府がフェイスブックを3月にブロックしたが)VPNを使えば今のところ使えるけれど、投稿は減っている。

ユーチューブもブロックされるのは時間の問題だが、大切なプラットフォームなので、厳しいことになると思う。VPN経由で今後も使えればいいけれど……そうでなければ誰かが違う方法を見つけるだろう。ロシアはいってみれば、イランに近づいている(北朝鮮かもしれない)。

筆者:ロシア政府のプロパガンダは機能しているのか。

マリア:機能している。高齢の人たちだけではなく、私と同世代の人たちにも響いている。学校の友達がWhatsApp(アメリカで広く使われているメッセージングサービス)で投稿している内容に恐怖したこともあった。ただ、政府はプーチン支持でないメディアをあらゆる手を使ってシャットダウンしてきたから…。「脱ソビエト化」のチャンスが1990年代にはあったが、2000年代に流れは戻りつつあり、新しいいびつな形になりつつある。内部で起こっている、酷い悲劇だと感じている。

筆者:食料や日用品が不足したりしているのか。

マリア:砂糖がなくなった。スーパーで、砂糖をみんな買い占めた。小麦とそば粉も(そば粉はロシアの主要穀類の一つとして食されている)。でも、コロナの最初に起こったのとなんの変わりもない状況だった。生理ナプキンやタンポンがなくなったりね。値上がりしたし、今後も値上がり続けるだろう。経済制裁による影響はこれから実際にやってくるのだろうし、経済が崩壊するのも時間の問題かもしれないけど、お店に食べ物はあるし、今は普通に思える。でも秋までには変わるかもしれない、予想は難しい。

筆者:国外に移住したいと思っているか。

マリア:一時的に移住が可能なら、したい。でも、仕事が国外で見つからないと現実的ではない。ただどこかに移住できるだけのお金がないので。夫の仕事が国外で見つかれば移住するかもしれない。

筆者:戦争はいつ終わると思うか。

マリア:ああ……。正直、答えが見つからない。できるだけ早く終わって欲しいのは確かだけど、そうは思えない。5月9日が戦勝記念日(ソ連が第2次世界大戦でのナチスドイツへの勝利を祝う日。ロシア政府は4月上旬、この日に軍事パレードを行うと明らかにした)で、プーチンにとってとても意味のある日だから、この日に「勝利」を宣言したいと見る向きもある。ただ、状況を鑑みるに、どうなるかは正直わからない。
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文=高以良潤子 編集=石井節子

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