「女性であることが不利に働くかもしれない」。そう感じた瞬間、小林は「『男性よりも仕事ができるんだ』ということを、実績を出して証明しないと認められない」と、仕事に没頭するようになった。
公務員時代の約5年間、土日はほぼ勉強に充てた。あえて多忙な部署への異動を志願し、繁忙期は3日間泊まり込みで仕事をしたという。当時は庁内に女性用の仮眠室やシャワールームがなかったため、トイレの洗面台で体を拭き、床にダンボール敷いて寝るような日々。ひと月の残業時間が300時間を超えることもあったという。
そんな小林に付いたあだ名は「鉄の女」。このような生活を続けた結果、心身のバランスを崩し、女性特有の身体の不調にも悩まされるようになった。
「生理が順調に来る人なんてこの世にいないと思っていたぐらい、生理不順は当たり前で、婦人科系の症状にも悩まされました。気づいたときには身体の不調だけでなく、メンタル的にも常にピリピリ、イライラしている状態。ふと立ち止まったときに、『私の幸せって何?』『何のために働いて何のために生きてるんだっけ?』と虚しくなってしまいました」
デリケートゾーンは、心と身体を知るバロメーター
そんな若手時代を過ごしてきた小林にとって、国見町との出会いは貴重な経験となった。
「時間の流れがゆっくりで、自分の幸せや家族の幸せを1番に考えて生きている人が多いと感じました。過去の自分のように、体調を崩すほどたくさんのことを我慢して、がむしゃらに働く必要はないのでは? と考え方が変わったんです」
東京に戻って同年代の女性を見渡してみると、かつての小林と同じように体調を崩している人や、キャリアか子育てかのどちらかを選ばざるを得ず離職を選んだ人など、悩みを抱える女性がたくさんいた。
「そこで、自ら彼女たちの心と身体を大事にできるようなプロダクトをつくりたいと考えたんです。そこで行き着いたのがデリケートゾーンのケアでした」
様々な菌が存在しているデリケートゾーンは、睡眠不足や食事の偏り、過度なストレスなどが重なると、菌のバランスが崩れてしまう。かゆみやにおい、おりものの不調などの様々な症状が現れるため、「自分の心と身体を知るバロメーター」にもなる。
「1日10秒でもケアをすることで体調の変化に気が付くことができます。多くの女性に、そうした『自分を大事にする習慣』をつくってほしいと考えました」