今回新たに50位以内に入った日本のレストランはいずれも、サステナブルな切り口を持つレストランだ。
まずは、去年の64位から50位アップ、14位でハイエスト・ニュー・エントリーにも輝いた「villa aida」の小林寛司氏は、和歌山県岩出市で、自分たちの食べる分の米や野菜を作りながら、ターブル・ドットならではのもてなしを提供する。
「野菜がない端境期もあるが、実はそれがクリエイティブの源。普通なら抜いて捨ててしまう大根の花やさやを取っておき、それをいかに料理にしていくかを考える」と、サステナブルなアプローチが創作につながっていると語る。
2021年7月にオープン、わずか8カ月で17位となった「SÉZANNE」のダニエル・カルバート氏は、作りおきをせず、全てアラミニッツで作るため、常に新鮮な食材が入り、ロスも少ない。食材の9割以上が国産だ。
「クラッシックなフランス料理は、元々サステナブルでレスポンシブル。肉なら骨やトリムした部分はソースに使うなど、食材を無駄なく使い切る知恵が受け継がれて来ている」という。また、今では多くのレストランで使われている真空低温調理器を全く行わず火入れを行うため、プラスティックの袋の使用も少ない。
今年度の「アジアのベスト女性シェフ」にも選ばれ、83位から42位にランクアップした「été」の庄司夏子氏は、母校で料理の世界を目指す学生たちにサステナブルについて教えるのみならず、コンポストの導入にも尽力。調理実習で出た食材の切れ端などを堆肥にして、学校の畑で使い、収穫したものを再度調理実習に使うなど「循環型の食と農のつながりを伝えていくのと同時に、若い世代が憧れる業界であることが必要」だと考えている。
左から公式大使の山田早輝子氏、庄司夏子氏、日本評議委員長の中村孝則氏 (C)Aya Kawachi
また、昨年の91位から43位に躍進した京都「Cenci」の坂本健氏は、去年の秋に日本の漁業や水産資源の未来を考える一般社団法人「Chefs for the Blue」の京都版の立ち上げの主要な役割を担った。「枯渇しつつある水産資源の問題に、地方から一石を投じると同時に、コロナ禍を経て、社会に必要とされる存在であるためにも、より一層、レストランが社会貢献することの大切さを感じるようになった」と語る。
地方への美食の広がりと、サステナブルなアプローチ、さらに女性シェフの活躍が、今後のフードシーンを読み解く鍵となりそうだ。