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2022.04.10

ツタンカーメンのマスクと100年続く美容のトレンド

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こうして、移り変わるものもあれば、定番となるものもあるのが美容やファッションだが、なんと100年も続いている流行がある。100年といえば、2つの大戦を経て、21世紀の今まで続いているということだ。それはマスカラである。もはや流行というより、ブラジャーと同じように、もしかしたら女性の美を支えるインフラ的要素になっているのかもしれない。

今からちょうど100年前、イギリスの考古学者ハワード・カーターがエジプトでツタンカーメンのマスクを発見した。古代エジプトの宝の中では際立って盗掘を免れ、5000点もの装飾品とあわせて美しい状態で発見された。これがヨーロッパで一大エジプトブームを起こしたのだが、実はこの黄金のマスクがマスカラをしていた。

黒い縁取りのエジプト人のアイメイクは、本来はナイル川で蔓延っていたハエウジ病を予防するため、香料入りの黒粉を目につけるというのが定説だが、100年前は知る由もない。金の塊のインパクトも大きく、まだ飛行機が珍しい時代でも、その話題は世界に伝わった。

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この頃開花しはじめたのが映画産業で、チャーリー・チャプリンが映画をつくりだし、1923年にはあの「HOLLYWOOD」の看板が山の上に完成し、ウォルト・ディズニーが会社を創業した。そんな時代にマスカラはぴったりのアイテムだった。

白黒トーキーの映画ではとくに目の動きが分かりにくいため、アイメイクが重宝されたのだ。そうして初期映画や舞台を中心として使われていたが、ツタンカーメン発見の衝撃と映画産業の勃興のパワーにより、大衆も目がはっきりとみえるアイゾーンメイクを真似るようになった。マスカラは、「メイベリン」という商品で世界に登場した。日本ではハリウッド化粧品が最初につくったそうだ。

ツタンカーメンがそもそも紀元前1400年前くらいの時代の人だとすると、3600年前のおしゃれがまだ世界で流行っているのは、すごいというより、美意識や女心、男心は、意外にも成長があまりないということかもしれない。すると、経済を通じて他の国を身近に感じるように、文化を通して、遠く昔の人類に親しみを覚えてしまうのは僕だけだろうか。

連載:オトコが語る美容の世界
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文=朝吹大

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