投資家から追加で投資してもらいやすくなる
また、追加投資も確保しやすくなります。スタートアップの中には、こちらから連絡するまで何カ月も音沙汰なく、向こうから連絡が来たと思ったらいきなり追加投資を頼まれるようなケースもあります。事業が明らかに順調であれば、それでもなんとかなるかもしれません。
しかし、そうではない場合は問題です。例えば、あとほんの少し資金があれば、シリーズAの資金調達の条件となる重要なマイルストーンをクリアできる状況だとします。普通なら、このような重要な局面であれば既存投資家から手を貸してもらえるはずです。もともとその企業のポテンシャルを信じてくれている人たちなのですから。
しかし既存投資家との関係維持を怠っていた場合、残念ながらその苦しい時期を乗り越えるのに必要な支援を集められない結果になる可能性が高いでしょう。
投資家から周りに良い評価を広めてもらえる可能性が高くなる
充実したIRから得られる3つ目のメリットは、投資家の心情として、よく知っていて興味があるスタートアップのほうが太鼓判を押しやすいという点です。ツイートで取り上げてもらったり、誰かに自慢してもらえることも増えるでしょう。
また、将来の資金調達ラウンドにも影響してきます。新規投資家は事前調査のために既存投資家から話を聞くことが多いのですが、そのときに相手から感じる熱意や情報の明確さが、投資判断のみならず投資額にも大きく影響してくるものです。
投資家の関心を維持しようと取り組み続けているスタートアップのほうが、投資家に良い評価を広めてもらうことができるので、様々な恩恵を受けやすいということです。
IRを難しく考える必要はない
一言にIRといっても、企業のステージによって意味は大きく変わってきます。しかし大まかに言えば、「投資家に常に情報を提供し、支援者であり続けてもらうこと」です。例えば、株主総会や取締役会などの基本的なこともIRの一種です。他にもメールやSNS、チャット、カフェでのミーティングなど、投資家とつながるためのコミュニケーション手段は様々です。
ちなみにCoralの投資先には、IR情報を動画(Loomで作成)で配信しているスタートアップがあります。伝える情報のクオリティを下げずに、参加者のスケジュール調整などの手間を省けるため、非常にうまくいっているようです。私たちとしても、動画形式のほうが助かります。動画ならファームのメンバー全員が視聴し、その企業の最新の状況や、それに合わせてどう支援するべきかについて知ることができるからです。
どういう方法がベストかは企業によって異なるでしょうが、小まめで配慮の行き届いたコミュニケーションはどの場合においても重要です。IRをコミュニティ・マーケティングのように考えると良いかもしれません。顧客との親密度が高いほうが、自分たちの企業を応援し、周りに勧めてもらえる可能性が高くなるでしょう。投資家も同じです。継続的な情報共有という基本をおさえることが、将来的に大きな効果をもたらすかもしれません。
連載:VCのインサイト
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