もちろん、IRが素晴らしいからといって成功するわけではありません。しかし、相関関係があるかもしれない要因はたくさんあります。
Y Combinatorの元パートナーであるAaron Harris氏も以下のように説明しています。
「YCでは卒業した企業から多くのIR情報が届きますが、どうやらIRのクオリティや更新頻度と、企業や起業家としての優秀さとの間には相関があるようです。直接的な因果関係があるとは決して思いませんが、優れた起業家であれば指標を重視し、戦略的に取り組み、継続的な成長を実現しているが故に、小まめでクオリティの高い情報共有をするであろうことは十分に考えられます」
私自身も経験上、同じことを実感しています。読み手に配慮した情報を積極的に提供している起業家のほうが、やはり責任感や実行力が高いことが多いです。
さらに言えば、IRにしっかり取り組んでいるスタートアップのほうが、以下のようないくつものメリットを享受できています。
メリットの話をする前に一言だけ触れておくと、Coralでは四半期ごとの数字の報告をお願いしている以外、どの程度の頻度で私たちと連絡を取るかは、創業者の皆さんに任せています。毎週連絡を取る創業者もいれば、半年に一度の創業者もいますが、どちらでも私たちは全く問題ありません。最も重要なことは、起業家が事業づくりに専念することです。
とはいえ、頻繁に連絡を取ることには以下のような利点があります。
投資家からさらなる付加価値を引き出しやすくなる
まず、投資家からより多くのサポートを得やすいというメリットがあります。投資家の関心が離れないよう情報を共有し続ければ、自分たちの企業のことをより強く、好意的に相手に印象付けることができます。そして当然ながら、そのほうが新たな人材や顧客、メディアとのつながりなどを紹介してもらいやすくなるでしょう。
そもそも支援できるリソースというのはどの投資家も限られていて、全ての投資先企業がそれを競い合っている状況なのです。
ここで優秀なスタートアップなら、投資家の意識が常に自分たちに向くようアピールし、さらにその投資家たちから最大限の支援を引き出すこともできます。中には、まるで投資家同士が「MVI(最も貢献した投資家!)」を競い合っているような雰囲気や流れさえも作り出せるスタートアップも存在します。