採用で人気の理由は「物語の一員になりたいから」広報のプロから学ぶ物語経営

PR専門家の本田哲也(右)と元マネーフォワード広報部長の柏木彩(左)


ナラティブ経営実現のためのTIPS


◎企業だけでなくステークホルダーも物語の一員


創業者や企業の強い思いを起点に、生活者や顧客を巻き込みながら、社会の現在と未来について物語り、行動していくことで共感を生み、企業のファンになってもらうことができる。

◎共感を生む物語を発信する


今の生活者は何を考え、何を動機として生き、働いているのか。この点を常に意識し、その欲求に合致した企業の物語をさまざまなチャネルで発信することで採用にも力を発揮する。

◎オーセンティシティを確立し社会課題解決とリンクさせる


社外にはたらきかける前に社内でも「自分たちらしさ、その企業らしさ」を腹落ちさせておく。その上で企業活動によって社会課題を解決できると企業の存在意義を感じさせ、顧客・社員両方のロイヤルティが高まる。

柏木:なるほど、私も同感です。

本田:まず社員が腹落ちをするために社内でヒアリングをして、オーセンティシティを探す。社員が納得しないオーセンティシティはありえない。「本質的に私たちがやっていることはこういうことだったよね」と問いかけると全員が「そうそう」と思えることを探すことで、裏表のないその企業らしさ=オーセンティシティとして言語化されるのです。

ただ、オーセンティシティ自体を宣伝するわけではありません。PR的な発想においては、どういったイシュー(社会課題)に対して事業を行っているかを明確にすることが重要です。そこで、社会課題解決とオーセンティシティが1本の線で結び付くように設計する。これがうまくいくと、社員も納得しメディアから見ても取り上げたくなり、さまざまな情報が広告やパブリシティで社外に発信されても、社員がしらけることはありません。

柏木:社会課題と経営者のオーセンティシティが1本の線でつながり、加えて社内のカルチャーが浸透していると思うのは、AI教材の開発・提供をするatama plusです。時間をかけて社員全員で「自分たちは何を大事にしたいのか」と繰り返し話をしているそうです。結局、1本の線でつながった上でそれを体現するのは社員だから、社員が自分たちの存在意義をすべて腹落ちさせることが必須。マネーフォワードもそうでしたが、こうした意味で最も重要なのは組織のカルチャーだと思います。

『ナラティブカンパニー』本田哲也


国内外で多くの企業のPR支援を手がけてきた著者の最新刊。「企業と顧客がともに紡ぐ物語」をナラティブと定義し、自社を選んでもらいファンになってもらうプロセスや企業価値を高めるためのヒントが詰まった一冊。
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文=堤美佳子/Forbes JAPAN編集部 写真=有高唯之

この記事は 「Forbes JAPAN No.091 2022年月3号(2022/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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