同社へ出資したのは、損害保険ジャパン、野村スパークス・インベストメント、シンガポールの投資運用会社パビリオンキャピタルなど15社と、融資が2社。シリーズBでの調達額としては国内最大規模だ。
インフラ領域で海外へ
シンスペクティブは2018年に創業し、天候や時間帯に左右されず地表を観測できる「小型合成開口レーダー(SAR)衛星」を開発。衛星からマイクロ波を地上に照射して、反射波で地形や建物の形を可視化し、取得データを解析、地盤沈下リスクの計測などを行っている。
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現状では、既に2機のSAR衛星を打ち上げており、来年末までに6機まで増やす計画だという。衛星の製造に必要な部品の調達には、1年半から2年という期間がかかるため、現在は、2019年に実施したシリーズAの調達資金を元手に、開発を進めている。
同社CEOの新井元行は、「6機飛ばすことによって、地球上のどこであっても1日1回、一次データを提供できるようになります。例えばインフラ開発では、工事現場のリスク管理や、メンテナンス、モニタリングを1日1回行うことができることになります」と語る。
CEOの新井元行(提供=シンスペクティブ)
今回調達した資金は、7機目以降の製造や打ち上げに当てていくという。さらに小型衛星の量産体制を構築するため、工場などの施設整備にも今回調達した資金を投入していく考えだ。その先には海外展開も見据えている。
「インドやオーストラリアを含むアジアでも、インフラ整備や防災時のデータ提供を目指しています。特に東南アジアでは人口増加が著しいため、今後もインフラの開発は増えていくでしょう。
工事に伴うリスクの判定や既に建設されたインフラの点検に、われわれのサービスを取り入れていただき、また洪水も頻発しているので、災害時の救命活動に必要なデータも素早く提供できるようにして、海外ビジネスの基盤を固めていきます」
シンスペクティブは、2019年にシリーズAで88億円を調達し、創業からわずか1年5カ月で累計調達額が109億円に到達。数多くのスタートアップを凌ぎ、世界最速で調達額が100億円を超えた。そして、今回のシリーズBでの調達、投資家からの視線も熱い。