GMにはEVを設計する能力はある。だが、製造に関しては何の実績も示していない。
2021年第4四半期、GMが米国内で納車(販売)したEVの台数はわずか26台にとどまっている。これは、前年同期比でほぼ100%マイナスという数字だ。その内訳は、「シボレー・ボルトEVが25台、ピックアップトラックの「GMCハマーEV」が1台だ。
納車台数がこれほどまでに激減した主因は、ボルトにバッテリーの発火事故が相次いだ結果、バッテリーセルの欠陥を理由に、全車リコールの措置が下されたことだ。
同じ第4四半期に、テスラは30万8600台を納車している。2021年通年で見ても、納車台数は前年比で83%増の93万6172台に達した。
テスラの将来に懐疑的な目を向ける人たちは、既存の自動車メーカーがEV事業に本格参入するのは時間の問題であり、そうなれば、こうした既存メーカーがEVの売り上げの大部分を占めるはずと主張している。従来型の自動車メーカーは、部品サプライヤーに関してスケールメリットを有しており、これが市場シェアの増大につながるはずだった。
だが、現実の展開は異なる。
テスラは、垂直統合を実現した企業だ。同社は、EVに必要な鋼板、バッテリーパック、ソフトウェアを自ら製作している。実際の顧客からの膨大な受注残を抱えていること以外にも、関わっている部品サプライヤーやベンダーが、従来型メーカーと比べて少ないことが、同社にとって有利に働いている。
2021年を通じて、世界中の従来型自動車メーカーが半導体不足の問題に苦しむなかで、テスラはこの優位点をまざまざと見せつけた。テスラの売上は飛躍的に上昇した。
GMは、微妙な立ち位置にある。同社は、幹部が掲げた「2030年までに生産する車を100%EVに切り替える」という目標実現に向けて進もうとしている。このメッセージは、プレスリリースの上では素晴らしいもののように聞こえる。だが、これを実現するのは、思っている以上に困難な過程になるだろう。
なぜなら、GMの強みとされているものは、実は弱点だからだ。同社の先行きには、EV用部品の不足、製品リコール、ソフトウェアの不具合、顧客満足度の低下という、さまざまな問題が山積している。