ロシアの報道官は、現在55歳のアブラモビッチがモスクワとキエフ間の交渉の初期段階に参加したと述べた。しかし、ロイター通信やロシアのタス通信は、交渉の行方はロシアとウクライナの両国の決定に委ねられていると伝えている。
ロイター通信は今月初め、アブラモビッチが和平交渉に向けた努力の一環として、ドイツのゲアハルト・シュレーダー元首相と会談したと報じていた。
英国のメディアは、アブラモビッチが数十年にわたりプーチン大統領と親密な関係にあるオリガルヒだと報じている。ウクライナの当局者によると、彼は2月下旬に和平交渉を促進するための役割を、ウクライナ側から打診されたという。
複数の報道で、アブラモビッチが2月下旬にベラルーシを訪れ、ロシアとウクライナ間の協議に参加したことが報じられていた。
フォーブスは、アブラモビッチの保有資産を73億ドル(約8900億円)と試算している。彼は、鉄鋼大手エブラズと金属会社ノリリスク・ニッケルの株式を保有し、英国のサッカーチーム、チェルシーFCのオーナーでもあるが、今月初めにはチームを売却すると述べていた。
米国はアブラモビッチに制裁を加えていないが、彼は英国や欧州連合、カナダ、オーストラリア、スイスから制裁を受けている。これまで20人以上のロシアの富豪が、米国やEU、英国から制裁を受けている。
WSJは23日の記事で、ゼレンスキー大統領がバイデン大統領に、アブラモビッチへの制裁を遅らせ、モスクワとキエフの仲介役を務めさせるよう助言したと伝えていた。しかし、米当局者は、彼がまだ和平交渉の促進に貢献していないと同紙に語っていた。
ゼレンスキー大統領の側近の一人の父親であるアレクサンダー・ロドニャンスキーは、アブラモビッチのプーチンに対する影響力は限られているが、ウクライナを助けることに同意した唯一のロシア人であると認めていると、フィナンシャル・タイムズは報じた。
アブラモビッチは、プーチン政権下で2001年から2013年までロシア極東のチュクチ地方の議会議長を務め、同地方の復興に25億ドルを拠出していた。