ビジネス

2022.03.23 08:00

いま日本に必要な、もうひとつのR&D「Resarch & Destroy」


校則を壊す流れも多々ある。一時期話題だった「ツーブロック問題」。大東学園高校では、生徒と保護者と教職員による三者協議会で、生徒代表が提案し議論が行われた。そして、美容師の保護者の「スッキリした髪形で、技術のひとつ」という後押しもあり、OKになったという。

頑張っているのは子どもだけではない。校則をなくした世田谷区立桜丘中学校。西郷孝彦校長(当時)は「靴下は白」「セーターは紺」などの制服のルールを、「なぜ?」「中学生らしさとは?」と質問し、最終的に「自由」に変えていった。ほかの校則についても疑問をぶつけていった結果、どんどん校則がなくなっていく。逆に学校内で増えていったのは「議論」とのこと。素晴らしい。


世田谷区立桜丘中学校の校長西郷先生の著書。ルールをなくすプロセスが詳細に書かれている。 

変わり種として好きなのは、常翔学園高校の端末を使った授業での話。ある生徒がクラスメートの登校時間データを基に、驚くべき調査結果を発表。それは「遅刻ギリギリに来る生徒のほうが点数が高い」。先生たちは普通早く登校するよう指導する。この常識を、リサーチで壊したのだ。

ビジネス界でも事例はある。工具問屋だった大阪の「大都」の娘婿が「古い仕組みを変えなければ、いずれ業界ごと沈んでしまう」と、問屋システムや流通の仕組みそのものを変えた。そして小売をリサーチして2002年にECを開始。店舗「DIY FACTORYでは、メーカーに売り場を提供し、工具の実演ができるようにした。結果、リアルとネットで大ヒット。その後、アマゾンジャパンの社長も教えを請いに来るようになった。


大阪の「大都」の、現在のECサイト「DIY Factory」。キットや事例を見ると、作りたくなる。

ほかにも、売り上げ目標を捨てる企業、マーケティングをやらない企業など、調べて壊して、成長している企業は続々と見つかる。

電通Bチームも、このR&Dの流れでできている。社員の才能をリサーチしたうえで、本業(A面)と、副業や私的活動や趣味など(B面)の壁を壊してきた。そして、どの仕事でも通説や慣例といったPlan Aから、未来のためのPlan Bに変える案のみを出して、14年からやってこれているのも、下ごしらえとして必ず「調べ尽くして、壊してから」企画しているからである。これが、実はプロジェクトのマル秘裏レシピ。みんなで、いろんなジャンルでResearchして、ひとつずつDestroyしていけたら。面白い時代が来そうじゃないですか?


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

倉成英俊◎2014年から電通Bチームをリード。アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所所長。20年、面白いプロジェクトを作る&手伝う専門会社「Creative Project Base」を創業。東京ベースで世界中のプロジェクトに携わり中。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。

文=倉成英俊 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.090 2022年2月号(2021/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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