燃え尽きと「壊れたはしご」
パンデミック以前に、多数の働く男女を対象に4年間にわたって追跡調査し、燃え尽きの原因解明に取り組んだ研究がある。その結果、女性は、仕事と家庭の両立という問題に加えて、職場で自分の能力が十分に活かされていないという理由から、より燃え尽きを感じる可能性があると報告された。
労働者がストレスを感じる要因は、能力を活かし切れていないという感覚と倦怠感だと論じられてきたが、それがもしかしたら、燃え尽きに徐々につながっている可能性がある。
「壊れたはしご」とよく言われるように、女性は男性よりも管理職に昇進できるチャンスが低い。そのせいで、多くの働く女性は自らのスキルを活かせずにいる。管理職に昇進することなく、能力や経験を持て余したまま同じポジションにとどまらざるを得ず、実力を発揮することも、自ら決断を下すこともできないのだ。同じポジションにとどまり、意思決定権も権限もない状態が、ストレスや不満の増加を招き、やがては燃え尽きた感覚がますます強くなっていく。
一方、働く女性は、他の従業員の燃え尽きを防ぐうえで、重要な役割を担うことができる。女性は、チームメンバーの心身の健康やウェルビーイングを、より重視する傾向があるからだ。マッキンゼーによる調査リポートには、こう書かれている。「女性は、燃え尽きに関して、どうしようもない状況に陥っている。女性は、燃え尽きによって苦しみやすい一方で、燃え尽きと戦おうと努力する傾向も強いからだ」
皮肉な話だが、女性は、他の人に助けの手を差し伸べようと頑張るあまり、自らのストレスレベルと燃え尽き度合いを悪化させてしまう場合があるのだ。