しかし、社内の全ての仕事を一人でこなすこうした天才的な人のストーリーでは、無視されがちなことがある。それは、会社の拡大に成功したリーダーの大半は、どこかの時点で手放すことと、仕事を他者に委任することを学ばなければならなかったことだ。
手放すことは、優秀な創業者や役員、リーダーにとって簡単なことではない。多くの積極的なリーダーはある程度、達成事項と権力が原動力となっている。
筆者のコンサルティング企業リーダーシップIQがインターネット上で行ったテスト「What Motivates You At Work?(仕事であなたがやる気を感じるものは?)」では、仕事で人を動かす5つの主な動機が成果、権力、親和、安全、冒険だったことが判明した。
10万人以上の回答者の答えによると、権力を動機としていた人は約14%だったが、上級役員は第一線に立つ社員よりも権力を動機としている確率が約75%高かった。権力に強く突き動かされているリーダーは、自分が指揮を取って他者に指示を出し、「決定者」の役割を担いたがった。
また、成果を動機とする人(全体の約30%)はプロジェクトに完全に没頭し完璧な成果を出せるとき、やりがいがある仕事に取り組んでいるときに強いやる気を感じていた。
急速な成長を実現するには成果や権力を求める人が必要だが、会社を大きく拡大するにはどのように仕事を委任し、他者を通して事業を率いるかを学ばなければならない。
レン・フィンクルは、市場で急速に成長を遂げるマスターデータ管理企業プロフィシー(Profisee)の最高経営責任者(CEO)だ。フィンクルは、投資家が元々の創業者のビジョンを超えた成長を求めていた複数のスタートアップを拡大させた経歴からCEOに抜てきされた。
フィンクルはこうした経験から、事業を拡大させる上で重要な教訓の一つは「全てを自分でやらない意思を持つこと」だと共有した。「物事を誰かに任せ、他者を通して組織を率いる意思を持たなければならない。スタートアップの段階では全ての小さな作業を自分でこなせるものの、それは成長の大きな障壁となるだろう」