ビジネス

2022.03.19 08:00

登山アプリYAMAPが導入した「腐るポイント」とは


大きな特徴となっているのが、“腐る”ポイントであるということ。貯めたポイントは3カ月で消えてしまうのだ。

その狙いは「貯める」ことではなく、「送る・支援する」という“循環”。背景には、春山なりのマネー資本主義への反省がある。



「現在のマネー資本主義は、実体経済から離れて“金融経済”が行き過ぎた結果、富裕層に富が集積する仕組みになってしまっています。その一因はお金や通貨が腐らないからだと考えています。そもそも、生物界には腐らないものは存在しない。だからこそ、消えてしまうなら使おう、貯めることよりも誰かに送ること、支援することを尊ぶポイントシステムをつくろうと考えました」

社内やユーザーからは困惑の声も


このような熱い想いを持って推進してきたDOMOだったが、春山が社内で初めて構想を提案したとき、従業員からの賛同は決して多くなかった。ユーザーからもネガティブな反応や、困惑の声が届いた。せっかく貯めたポイントが「3カ月で失効してしまう」という仕組みは、ユーザー自身がこれまでに経験していない分、なかなか理解されないものだった。

そこで春山は、説明会を開いてユーザーと対話したり、noteで発信したりと理解促進に力を注いだ。YAMAPではこれまでにもユーザーと直接話す説明会を開催してきており、サービスをユーザーと一緒につくりあげてきたという自負がある。ユーザーの共感を得られる自信があった。



丁寧な対話を重ねることで徐々に浸透していき、2022年3月時点で、DOMOを通した支援プロジェクトの数は10を超え、支援に参加している人数は延べ約19万人にのぼっている。

「DOMOは登山道の整備や植樹など山の保全活動の支援として使えます。想定より多くの方にご活用いただき、驚いています。当初は2000万円程度をDOMOの原資に当てる想定だったのですが、すでに想定額を超えて追加の負担を私たち運営側が担っている状態です」

企業としてはマイナスとなるが、春山は「YAMAPというコミュニティプラットフォームで、共助の仕組みを実現するための投資」と割り切る。

「YAMAPはインターネット企業ですが、インターネット空間に閉じず、リアルの自然を大切にし、風景をより美しくしながら次世代につなぐ実例をつくっていくことが大事です。なので、広い意味でDOMOの原資負担は広告宣伝費とも言えます。登山道整備や山の再生に活用にしていることを考えれば、テレビCMに予算を投じるより、健全なお金の使い道ができていると考えています」
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文=尾田健太郎 構成=田中友梨 撮影=小田光二

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