「女性は戦争をしない」 シェリル・サンドバーグの主張は正しいのか

シェリル・サンドバーグ(Drew Angerer/Getty Images)

大手SNSフェイスブックを運営する米メタのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は、8日の国際女性デーのイベントでCNBCテレビに対し、もしロシアとウクライナの首脳がいずれも女性だったら、両国は戦争を起こさなかっただろうと語った。サンドバーグは「女性が率いる2国間では、戦争は絶対に起きない」と断言。しかし、これまでの研究結果や歴史をみてみると、この考えは誤りかもしれないことが分かる。

男女の特性に関する心理学研究では、サンドバーグの主張を裏付ける結果が出ている。女性リーダーは男性リーダーよりも協調的な傾向にある証拠は多く、女性は一般的に共感力も高い。これに対し、男性は幼少時から攻撃性が強い。

歴史学者や政治学者は、戦争を引き起こす主な要因として自信過剰があることを指摘してきた。心理学研究では、男性の方が女性よりも自信過剰になりやすいことが分かっている。現在のウクライナ紛争について、識者たちの間では、ロシア側の戦況はプーチン大統領が予想していたよりも厳しいものとなっており、プーチンの自信過剰がウクライナ侵攻の一因となったとの見方が出ている。

ただ、男性は攻撃的で自信過剰、女性は協調的で共感力が高いという傾向は、国家首脳にそのまま当てはまらないかもしれない。女性首脳の場合、「女性らしい」女性は選別過程で淘汰され、「男性らしい」特性を持つ女性のみがその地位に就いている可能性がある。

首脳の座に就いた女性は、攻撃性に欠けて軍事面にも弱いという女性の固定概念を打破するため、自分の力を証明する必要に迫られる。ある研究では、女性首脳は国際的な軍事危機に際して特に強硬な振る舞いをし、女性は弱いという固定観念に抗う傾向があることが示された。同じ理由により、女性リーダーは脅威に直面しても引き下がれない傾向にある。

1875年〜2004年の各国首脳を対象に、侵略行為における男女間の差を統計的に分析した書籍『Why Leaders Fight(リーダーはなぜ戦うのか)』によると、武力紛争を少なくとも1回起こした首脳の割合は、女性で36%だったのに対し、男性は30%だった。

ただし同著は、これは女性の方が概して攻撃的だという意味ではないとし、男性による侵略行為は694件、戦争は86件だったのに対し、女性は侵略行為が13件、戦争はインドのインディラ・ガンディー首相による1件のみだったと指摘。女性首脳のリスクは男性首脳と同様である可能性が高いと結論づけている。
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編集=遠藤宗生

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