ビジネス

2022.03.13 08:30

地球の上を流れる「資本の川」が向かう先

「ジョビー・アビエーション」の試作機の前に立つ創業者兼CEOのジョーベン・ビバート

「空飛ぶタクシー」を開発した会社が上場した。トヨタが出資していたeVTOL(電動垂直離着陸機)のジョビー・アビエーションだ。

米国初の電動エアタクシーとして2023年末までに稼働予定のジョビー・アビエーション。出資者の一つ「未来創生ファンド」を組むのはトヨタ自動車、三井住友銀行、スパークス・グループだ。スパークスの阿部修平社長に投資の理由を聞いた。


ピーター・F・ドラッカーの有名な言葉に「すでに起こった未来を探せ」があります。人口動態の例がわかりやすいでしょう。

100年前は19億人だった世界人口がいま4倍になり、2050年には95億人まで増えます。人口増は確実な変化です。急増から派生する「起こっていた未来」は食糧と環境の問題です。すると解決を具体的に考える起業家たちが現れ、AIや再生可能エネルギーを武器にするでしょう。起業家が価値を生み出すかどうかを見極めて、資本家と事業家をつなぐのが、「資本の代理人」である投資業です。

私の顧客である中東産油国政府の財務責任者たちが、ある時期から「スマートグリッド」という言葉を使うようになりました。どの産油国でも呪文のように語りだしたのです。まるで宇宙から地球を俯瞰すると、資本の川が流れ出したように見えました。新たな成長領域にお金が川のように流れ出したのです。送電網が変われば、関連産業に影響を与えます。

人々が何を期待し、それを一定期間で実現して価値を生み出せる事業家は誰か。分析と判断をして、事業家の思いを叶えるための手伝いをするのが私たちの仕事です。

まさにジョビー・アビエーションがそうです。ジョビーのような経営者には今後色々な不測の事態が降りかかってくるでしょう。それを乗り越えて、やり遂げる人なのか。投資家はその判断ができるようになるために、毎日経営者に会う経験を積む必要があります。

未来を知るには、新しい常識をリスペクトできるかも大事です。産業革命の時代、5歳くらいの子供たちが安い労働力として使われるのが常識でした。疑問に思った人が解決に動き、児童労働は糾弾される時代になった。いまでいうと、将来、「お父さんってCO2を出していたの?」と子供からあきれられるときがくると思います。CO2排出の問題を解決するためにロードマップを描ける事業家たちが現れています。

「資本の川」とは正しいところに流れ、その先に未来があると思うのです。


阿部修平◎スパークス・グループ代表取締役社長。1954年、札幌生まれ。上智大学卒業後、米バブソンカレッジでMBAを取得。ジョージ・ソロスに運用を任された後、89年にスパークス投資顧問を設立した。著書多数。

文=フォーブスジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.090 2022年2月号(2021/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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