「国際審査会で優勝した、アフリカのルワンダのコーヒー豆の生産者と単独契約しました。そのコーヒー豆の製造工程では、福島を代表する酒蔵である国権酒造の酒酵母を用いることにしました。豆は福島の当社で焙煎して、出荷しています。豆の品質、焙煎へのこだわりなど、まさに『最高級』のコーヒーに仕上げられたと思います」
自社での焙煎の様子
実は、中島社長がルワンダと最初に関わりを持ったのは、2011年の震災直後だった。
「震災による衰退を克服するには、福島に籠っていてはいけない。むしろ、世界に打って出なければ」
そうた中島社長は、世界中のコーヒー豆の産地を自らの足で歩くことを決意する。その途次で立ち寄ったルワンダの人々に、中島社長は心を動かされたのだという。
ルワンダは、アフリカのなかでも「最貧国」のひとつとして知られている。1994年に起きた民族対立による大虐殺によって、わずか100日間で100万人が犠牲となった。いまでもまだ、その復興の最中だ。
「ルワンダのコーヒー農園の人たちと交流するうちに、苦しいなかでも助け合って必死に前を向く姿は、どこか震災からの復興の道を歩む福島の人々の姿と重なりました。またルワンダの人たちも、戦後の日本の復興の姿や福島の震災からの復活への取り組みを、自分たちに重ね合わせているようでした。彼らの姿から、私自身も新たな挑戦へのエネルギーをもらったのです」
ルワンダでのコーヒー豆の選別の様子
中島社長は、その恩返しの意味も含めて、ルワンダに水を確保する井戸を寄付した。こうしたやりとりを経て、ルワンダとの絆は強まっていき、福島の酒酵母を用いたコーヒーの開発にもつながる。
さらに中島社長の挑戦は、酒酵母の使用だけにはとどまらない。こだわりのコーヒーによく合う、お菓子の開発にも積極的に取り組んでいる。
2016年には、コーヒー豆の焙煎で培った技術を活かして、カカオ豆から「ビーントゥーバーチョコレート」をつくりだす。さらに、前出の国権酒造とともにこのチョコレートを使用したフォンダンショコラも開発した。
2018年には、福島の笹の川酒造とウイスキーボンボン・チョコレートを開発。他にも地元産の素材へのこだわりから、福島産の米粉のモッチリとした食感を活かしたチョコレートケーキや、福島果樹試験場が開発した「ほおずり」という品種のリンゴを使用したアップルパイもつくりだした。