知られざるサウナ大国、エストニアの「サウナと共にある暮らし」とは


個人的に、エストニアのサウナ文化を説明する時には、日本のお風呂文化を例に出すことが多い。古くから温泉に入る習慣を持つ日本では、昭和期にユニットバスが普及し、今日では必ずと言っていいほど各家庭にお風呂がある。それでも、時には温泉や銭湯に足を運び、普段とは違う形で温浴を楽しむ。

他方、同国では、古くから各家庭にサウナ小屋があった。その後、1991年の独立回復以降は電気ストーブを用いた屋内用サウナの数が急増。今日では、家にあるサウナを楽しみながらも、時にはサウナが備え付けられた温浴施設(スパ)に出かけるのが、エストニアにおけるサウナ文化だ。


エストニアのスパ 20種類以上のサウナを楽しむことができる(提供:Elamus Spa)

自宅でお風呂を貯めるのが面倒くさいから銭湯やジムで入る、という日本人がいるように、エストニアでも自宅のサウナを温めるのが面倒だから、ジムやスパで入る、という人もいる。

また、日本のスーパーマーケットでお風呂グッズが売られているように、エストニアのスーパーマーケットでもサウナ用品(ヴィヒタやサウナオイルなど)が売られている点も興味深い。

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エストニアのスーパーマーケットの様子 棚を様々なサウナ製品が埋め尽くしている(筆者撮影)

エストニアサウナの特徴


「フィンランドサウナと何が違うの?」 これは、エストニアのサウナの話をしていると必ず受ける質問だ。

正直、エストニアに移住した当初は違いが全く分からなかった。エストニアであっても、施設によっては入り口に「Finnish Sauna(フィンランドサウナ)」と記載されているほど、定義が曖昧である。それでも数年間エストニアとフィンランドのサウナに入り続けていて、見えてきたものがある。

エストニアは1991年に独立を回復し、以降は北欧諸国に追いつくべく急成長を遂げてきた。そのベンチマークになっていたのが、対岸の国・フィンランドである。実際エストニアでは、ソ連の支配下であった期間に見た目が全く同じ団地やビルが多く建てられたが、独立回復後は北欧様式を取り入れた真新しい商業施設やマンションが主流になっていく。

サウナにおいてもその流れが汲まれたのだが、フィンランドを意識するがあまり、ある種、追い越した形となる。
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文=齋藤アレックス剛太

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