「僕たちは、古くからの資本主義に対する人々の考え方すら、変えることができるかもしれない」
NFT(ノンファンジブル・トークン)とブロックチェーン技術は、シウのビジョンを実現しつつあるが、たった4年ほど前まで、彼の会社は苦境に立たされていた。小さなモバイルゲーム企業だったアニモカ社は、奇しくもオーストラリアの証券取引所に上場していたが、2014年1月時点の時価総額は600万ドル足らずに落ち込んでいた。
そして2017年、シウは、ブロックチェーン上でネコを育成するゲームの「クリプトキティーズ(CryptoKitties)」と偶然出会い、バンクーバーに拠点を置く運営元のダッパーラボに投資した。現在の企業価値が76億ドルに上昇した同社への投資が、シウにとって初めてのNFT関連への投資となった。
アニモカ社は現在、世界最大のNFTマーケットプレイスで昨年の売上が推定3億7500万ドル(約430億円)のOpenSeaや、NBAのNFTゲームで2020年に10億ドル近い「モーメンツ」を販売したダッパーラボ、大ヒット中のNFTゲーム「Axie Infinity」のメーカーで評価額が30億ドルとされるSky Mavisなど、最も成功しているNFT企業のほとんどに出資している。
ジョージ・ソロスも出資、評価額54億ドル
1月中旬、アニモカ社は評価額54億ドル(約6160億円)で3億6000万ドルを調達した。フォーブスは、同社の10%を保有するシウの持ち株の価値を約5億ドルと試算している。
アニモカ社の出資元には、ウィンクルボス兄弟やジョージ・ソロスの投資会社が含まれている。2017年の暗黒時代から、同社は57人だった従業員を600人以上に増やし、2021年の最初の9カ月間で、6億7000万ドルの収益を上げた。
NFTの市場規模は、2020年の1億ドルから、昨年は250億ドルにまで膨れ上がった。DappRadarのデータによると、その5分の1がゲームからのものだった。フィリピンなどの国では、低所得層のプレイヤーが、1日数ドルの安定した収入を得ることができるPlay To Earn(遊んで稼ぐ)型のゲームが注目を浴びている。
欧米のゲーマーたちは、このトレンドをあまり受け入れてはおらず、ブロックチェーンゲームは、崩壊を待つ新たなバブルだという見方もある。しかし、シウはNFTゲームに輝かしい未来が待っていると考えている。「ここでは、少なくとも私たちが考えるように、誰にとってもプラスになる方法で業界を形作ることができると思う」
ブロックチェーンゲームは、プレイヤーがゲーム内で特別な服や強力な剣などのアイテムを売買できるだけでなく、それらの資産がゲームとは無関係にブロックチェーン上で存在するという「真のデジタル所有権」のアイデアに大きな賭けをするものだ。
この理念が、既存の大手のゲーム会社が支配する業界で、実際にどのように展開されるかはまだ定かではないが、NFTゲームの適用事例の1つとして、Play To Earnはすでに注目されている。