トランクを確認してみて驚いた。BセグメントのEVにもかかわらず、バッテリーやモーターなどがスペースを犠牲にせずに、430Lを確保しているのでサイズは十分だと思う。ラゲージスペースの床を少し前に引っ張り上げで、さらに下に引き直すと、2段階のスペースとして使える。つまり、その床下の隠れスペースには荷物の出し入れが非常に楽だ。
さらにその下にも2つの充電ケーブルが収納できるスペースを備えているので便利。2列目のシートバックの上のレバーを引いて背もたれを前に倒すと、ほぼフラットフロアが生まれるので、かなり使いやすい。
室内のデザインにもかなり力が入っている。ステアリングホイールの上下には平らの部分もあるし、カーボンファイバー調とアルミのアクセントはとてもシックなので、第一印象は、デザイン性にぶっ飛んでいると思うけどトータルで見るとまるで現代的アートのようだ。
立体的な「3D i-Cockpit」は直感的な操作をもたらす。センターコンソール上の鍵盤様のスイッチ類は品があり、3Dのデジタル・ヘッドアップ・インパネには、ドライブモード、バッテリー残量、回生ブレーキ作動状況などBEVならではのドライブ情報が格好良く表示される。
ただ、メーターはダッシュボードの高い位置にレイアウトされている。というのは、上下がフラットでスポーティなデザインのハンドル越しにメーターを見ることになるので、これには少し慣れが必要だろう。
さて、パワーユニットはどんなものなのか。
駆動用リチウムイオン電池の容量は50kWh分であり、フロントアクスル上に置かれた最高出力136PSのモーターで前輪を駆動するという構造は、同じグループPSAのピュアEV「プジョーe-208」や「DS 3クロスバックE-TENSE」を通じてすでに日本でも展開されている。プジョーによると、一充電走行距離は360kmというけど、リアルワールドでは、270〜280kmぐらいだろうか。また、充電にかかる時間だけど、バッテリー容量80%までの急速充電は50分ほどかかる。
実際走ってみると、もちろんBEVだから振動もないし、静粛性は抜群。聞こえてくる音は風切り音とタイヤノイズしかない。また、電気モーターのおかげで瞬時にトルクが立ち上がる加速はガソリン仕様より確実に速い。さすがにテスラやポルシェのBEVのような爆発的な加速はないけど、絶対的な加速力は十二分。ステアリングは軽いけど、しっかりと路面からフィードバックしているし、狙ったラインを綺麗にフォローしてくれる。
また、どのザラザラした路面でも、アンジュレーションを丁寧に吸収するので、乗り心地はさすがにプジョーらしい「猫足」だ。安全装備だけど、CCDカメラ、レーダー超音波センサーを搭載する先進運転支援システム(ADAS)も付いているので、周囲の状況を常に把握している。
高速でも快適なパワーとスムースさを体感。
今年から、トヨタ、スバル、日産、三菱、アウディ、フォルクスワーゲン、またプジョーも属するステランティスなどの国内外メーカーから、どんどん手頃なBEVが登場してくるけど、特に自分の体にピッタリと合うジャケットみたいに、スタイリッシュに着こなしたい人に向けて、e-2008GTをおすすめする。
ただ、同車は格好良いし、走りもライバルには負けないけど、僕がBEVに乗り換えるにはもう少し急速充電のインフラを強化して欲しいな。価格は、452万円からと言うことで、EVにしてはリーズナブルだと思う。
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