年内に10億ドル市場へ成長、「メタバース不動産」の行方

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テック勢が先導する「メタバース不動産」、既存業界は割り込めるか


人々の交流の場としてバーチャルな世界が人気を集めていることは、フィジカルな体験にとって脅威となっている。実際、eコマースはこれまでも小売不動産業界に打撃を与えてきた。裏を返せば、所有する商業不動産の人気や存在感を保つために、テナントミックスを変更・更新してきた大家のみが生き延びてきたとも言えるだろう。ということはつまり、消費者行動の次の変化がメタバースに向かうものなら、関連する業界はそれに乗りそこねないようにする必要があるということだ。

現在のところ、そうした動きの主導権を握っているのはテクノロジー企業だ。「Decentraland(ディセントラランド)」は、ブロックチェーン(分散型台帳)プラットフォーム「イーサリアム」を基盤とした3D世界で、参加者はトークンを使って土地や商品、サービスを購入できる。サムスン電子やサザビーズなどが出店しており、来月にはメタバースで初となるファッションウィークも開催される予定だ。また昨年、ボストン・プロトコルはディセントラランド内に仮想商店街を建設するため、70万4000ドル(約8100万円)で用地を取得している。

デジタル不動産開発をリードする企業の一社としてはエブリーレルム(旧リパブリック・レルム)が挙げられる。同社はさまざまな仮想世界に土地を保有しており、ディセントラランドでも「Metajuku(メタジュク)」というショッピング街を構える。NFTでの不動産購入にあたっては、実物の不動産の取引で用いられる手法を活用しているという。最近はディセントラランド内に、贈答用のNFTを販売するコンセプト店もオープンさせている。

メタやマイクロソフトのようなテクノロジー大手は、デジタル不動産企業になる能力も十分に備えている。いずれにせよ、デジタル不動産を手がける企業が多くなるのは時間の問題だろう。少なくとも現時点では、既存の商業小売不動産業界がメタバースで生き残り、繁盛する可能性はまだ残されているのではないか。

編集=江戸伸禎

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