ビジネス

2022.02.15

「未利用魚」のサブスクで話題。遺言に反して起業した26歳の挑戦

ベンナーズ創業者の井口剛志


未利用魚の価値向上にも貢献


いま水産業界では、流通構造や未利用魚のほかにも、課題が山積している。漁業従事者の人口は年々減少の一途を辿り、平均年齢も60歳近い。当然、後継者問題も喫緊の課題だ。

井口は「根本にある問題は、そもそも儲からない商売だということ」と分析する。だからこそ「フィシュル」では、“魚を食べる人(消費者)”だけでなく、“魚を獲る人”や“社会”にも良いという「食の三方よし」を実現することによって、漁業の課題解決を狙っている。



サブスクにしている点もポイントだ。事前に需要が把握できるため、漁業従事者にあらかじめ数量と価格を提示できるというメリットがある。

また、未利用魚の価値向上にも貢献している。これまで肥料や養殖魚のエサとして安く取引されていた未利用魚を数倍高く買い取ることで、漁師の意識も変わってきている。

「最近では、未利用魚にも価値があることを分かっていただけるようになり、市場に流通する食用の魚と同様に、水揚げ時に腐敗を抑えるための氷締めをしてもらえるようになりました。水揚げ量も増えて、魚の質も高まっています」

2022年中に会員数を8倍に


2022年1月には、アカツキやセゾン・ベンチャーズ、エンジェル投資家を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額3200万円を調達。

今後はこの資金をもとに、サービスの認知・拡大を推し進めるためのデジタルマーケティング投資と組織拡大に注力していく。具体的には、現在500人弱の会員数を、2022年中に4000人まで増やす予定だ。

「“食の三方よし”を実現する。それだけはブレさせてはいけないと思っています。本当の意味での持続可能な新たな食の仕組みを、ビジネスを通じて構築していくことが我々のミッションです」

文=小谷紘友 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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