その流れは、今にいたるまで続いている。厳しいクオータ制(難民を欧州連合加盟国に義務的に割り当てる制度)が敷かれているため、安全な避難場所を見つけられる人はごくわずかだ。長い待機リストのせいで、安全な国へ移動できずに終わる人もいる。そうした人たちは、我々からの同情の言葉を聞かされることはあっても、それ以上のことはほとんど得られない。
難民危機への対応に失敗している一方で、我々は人々が集団移住を余儀なくされる根本的原因への対策にも失敗している。英国のデビッド・アルトン上院議員は2022年1月、議会での討論の場で、「国際的な緊急対応によって根本的原因に取り組むことと、組織的で継続的な国際協力がなければ対処できない、複雑な戦略上の問題であることを認識」するよう訴えた。
アルトンが訴えているのは、「世界的な義務に正面から向きあい、なぜ集団移住が急激に増えているのかを理解し、果てしない壁によってではなく、真剣かつ計画的な経済的・社会的・民主的な投資によってこの問題に対処し、我々の国境から遠く離れた場所で、尊厳ある生活の構築を支援するにはどうすべきかを理解する」ことだ。
残念ながら、政治の世界には、それを実行する意志はほとんどなさそうだ。何しろ、果てしない壁によって対処し、扉を閉ざして目をそむけるほうが簡単なのだから。