この学生は、19歳のジャック・スウィーニー。ツイッターアカウント「@elonjet」で、マスクのプライベートジェットの位置情報を公開している。マスクはスウィーニーに送った一連のメッセージで、安全面での懸念があるとして、5000ドル(約58万円)を支払うので追跡をやめてほしいと依頼した。するとスウィーニーは5万ドル(約580万円)ではどうだと返答。マスクはその後、連絡を絶ったと伝えられている。
スウィーニーは、この趣味をビジネスに変えることを計画しているという。だが世界の最富裕層を狙った今回の行為により、20年以上にわたり白熱してきた安全問題をめぐる議論に巻き込まれてしまうかもしれない。
全米ビジネス航空協会(NBAA)の広報担当者ダン・ハバードは、スウィーニーの行為を「航空便ストーキング」と呼び、「航空機に乗るためだけに個人のセキュリティーと安全を犠牲にすることを強いられないようにする必要性が浮き彫りとなった」と指摘した。
衛星通信サービス企業サットコム・ディレクト(Satcom Direct)サイバーセキュリティーソリューション部のジョシュ・ウィーラー部長によると、ジェット機の着陸予定時間と場所が分かれば、ハッカーにとって格好の標的となる。ハッカーは着陸地の近くに待機し、乗客の電子機器をハッキングできるかもしれない。
270機のジェット機を管理するソレラス・アビエーション(Solairus Aviation)のダン・ドロハンは「私たちは業界全体で団結しなければならない。これは私たちと顧客にとって、重要な優先事項だ」と説明。スウィーニーがしたような追跡行為は「違法なビジネス」であり、米連邦航空局(FAA)により停止させられるべきだと主張した。