オピオイド依存治療に大麻成分利用 米で治験へ

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米食品医薬品局(FDA)は、大麻から抽出される成分「カンナビジオール(CBD)」を使用した米バイオ製薬会社アナンダ・サイエンティフィック(Ananda Scientific)の治験薬「Nantheia ATL5」について、オピオイド系鎮痛剤の依存症治療における補助療法として評価する臨床試験(治験)の開始を承認した。

同社が今年1月行った発表によると、治験はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で行われる予定。Nantheia ATL5は、軟質ゲルカプセル1つにつき100ミリグラムのCBDが含まれる経口薬だ。イスラエルの製薬企業ライオトロピック・デリバリー・システムズ(Lyotropic Delivery Systems)から使用許諾を得て、CBDの有効性と安定性を向上させる「リキッドストラクチャー」技術が使用されている。服用により、依存患者のオピオイド摂取量を減らせる可能性があるとされる。

試験を率いる治験責任医師の一人であるイーディス・ロンドンはプレスリリースで、治験の承認は「オピオイド使用障害への代替的な治療手段を提供し、オピオイドのまん延を食い止め改善するべく続けられている研究において、重要な節目だ」と述べている。

米疾病対策センター(CDC)によると、米国で1999年以降、薬物の過量摂取により亡くなった人は約84万1000人。2019年の薬物過量摂取による死亡例の70%以上はオピオイド関連だった。

オピオイド使用障害の治療においてCBDが持つ可能性を評価するため、米マウントサイナイ病院依存症研究所の研究者が行った動物実験では、CBDの投与により、薬物を摂取していない間のヘロインを求める行動が減ることが示された。

しかし、オピオイド危機解消に向けた治療薬としてのCBDの使用に関しては、今も議論が紛糾している。慢性痛の治療に対し大麻がオピオイドの代替手段となり、オピオイドの過量摂取やそれによる死を減らせると考える人もいれば、大麻を使うことでオピオイド使用障害の人の依存が抑制されると考える人もいる。

FDAは2020年、CBDを含む未認可商品を違法に販売していたとして、企業2社に対し文書で警告。声明で、「オピオイド危機は米国で今も深刻な問題であり続けていて、FDAでは今後も根拠のない治療をうたって商品を販売し利益を得ようとする企業を取り締まっていく」と述べた。

FDAは、CBDを含む未認可商品の科学的根拠や安全性、有効性、品質に関しては未解決の問題が多いと考えている。こうした医薬品で、唯一FDAの承認を受けているのが、GWファーマシューティカルズ(GW Pharmaceuticals)が開発したてんかん治療薬「エピディオレックス(Epidiolex)」だ。高揚感を生む大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)は含まず、CBDを主成分としたもので、2018年に承認された。2歳以上の患者で、まれで深刻なてんかんであるレノックスガストー症候群とドラベ症候群の治療に効果を発揮することが示されている。

編集=遠藤宗生

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