経済・社会

2022.02.01 06:00

耐性細菌による死者、世界で120万人超に 子どもは特に高リスク


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいては、かつてない規模の資金調達が行われ、イノベーションが実現したが、抗生物質耐性の問題に関しては、相対的にあまり対策がとられていない。薬剤耐性は、現在私たちが利用している多くの薬を無価値にしかねない、パンデミックと同じくらい危険な事態であるのにもかかわらず、医療と畜産の分野における無節操な抗生物質の使用が危機の到来を早めている、と専門家は警鐘を鳴らす。

論文で指摘されているように、耐性細菌はすでに深刻な問題を引き起こしつつある。結核などの「過ぎ去った脅威」とされてきた病気が、治療困難な形態で復活してきている。世界保健機関(WHO)の専門家たちは2021年、パンデミックのさなかに抗生物質の使用について警告を発し、抗生物質耐性を備えた「スーパー淋病」が拡大する可能性があると指摘した。

薬剤耐性は誰にとっても脅威だが、研究チームは、幼い子どもたちがとりわけ高いリスクにさらされることを示した。薬剤耐性が原因で亡くなった人のうち、およそ5人に1人は5歳未満の子どもたちだった。

ワシントンD.C.にある疾病動態経済政策センターに所属するラマナン・ラクシュミナラヤン(Ramanan Laxminarayan)博士(この研究には参加していない)は、論文に関連したコメンタリーにおいて、この研究は薬剤耐性の問題により明確に光をあてたと述べ、薬剤耐性は、かつての「知られざる隠れた問題」から、今やもっとも切迫した公衆衛生問題の一つとなっていると指摘している。

さらにラクシュミナラヤン博士は、薬剤耐性の研究資金は、問題の規模と比べると圧倒的に不足しており、HIV研究に費やされる毎年500億ドルよりもはるかに少ないだろうと述べている。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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