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2022.01.31 10:30

イーロン・マスクが大統領を罵倒、「国民をバカにしている」


労働組合を否定するマスク


これには、マスクが昨年12月に開催されたカンファレンスで、「ビルド・バック・ベター法案を可決すべきではない」と発言し、「法案には会計上の問題が多く含まれている」とツイートしたことが影響しているが、それ以外にも理由が考えられる。マスクは、カリフォルニア州フリーモントにあるテスラの工場を組織化しようとする全米自動車労働組合と対立しているが、労組寄りのバイデン政権は、こうしたマスクの姿勢を好ましく思っていない。

また、テスラは最近、中国の新疆ウイグル自治区に販売店を開設し、人権団体や一部の議員から批判を受けている。アントニー・ブリンケン国務長官は、中国政府による同自治区でのウイグル族へのジェノサイド(民族大量虐殺)や人道に対する罪を批判している。

マスクとバイデンの不仲は、過去の経緯を考えると興味深い。テスラは、バイデンが副大統領を務めたオバマ政権時代、エネルギー省によるグリーンエネルギー企業向け支援プログラムを使って4億6500万ドルの低利融資を受けた。テスラは、数十年前に建設されたトヨタのフリーモント工場を2010年に買い取った際、この資金を使って工場の改修を行った。このときの融資や、テスラ車を購入した顧客に対する連邦税の優遇措置がなければ、同社は設立初期の困難を乗り切れなかったかもしれない。

テスラは26日、2021年第4四半期の純利益が前年同期比8倍の23億2000万ドル、売上高が177億ドルに達したと発表した。通期の純利益は55億ドル、売上高は538億ドル(約6.2兆円)で、何れも過去最高を記録した。

GMとフォードを称賛するバイデン


マスクがテスラの好業績をアピールしているとき、バイデンはGMのバーラCEO、フォードのジム・ファーリーCEO、カミンズのトム・ラインバーガーCEOを讃えていた。

「驚くべきことに、中西部工業地帯は復活しつつある。復活を遂げただけでなく、世界で最も洗練された製造を行っている」とバイデンは述べ、これらの企業が組合員を雇用していることを賞賛した。一方、テスラは工場でのロボット導入を推進している。

大統領は、GMが1月25日に発表した、ミシガン州でEV生産を増強するための70億ドルの投資計画や、フォードが昨年発表したEVピックアップ「F-150ライトニング」などの生産に向けた110億ドルの投資計画を賞賛した。

GMのバーラCEOは、EV購入に対する消費者へのインセンティブを声高に支持し、「市場を活性化する」と述べた。一方、同様のインセンティブの恩恵を受けて事業を拡大させてきたマスクは、今回は政府の対策に反対している。

テスラは、好調な決算を発表したばかりであり、今はまだバイデンに歯向かう余裕があるかもしれない。しかし、運輸省が同社の運転支援機能「オートパイロット」に対する監視を強めるなど、規制強化への対応に苦慮するようになったとき、マスクはホワイトハウスに招待されることを望むかもしれない。

編集=上田裕資

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