2. 危険な「ホットゾーン」への対応
紛争や気候変動、パンデミック、貧困、不十分なガバナンスが組み合わさると致命的です。ソマリアのICRCチームは先日、30万人以上が深刻な干ばつの影響を受けているガルグドゥード州を訪れました。干ばつという大きなストレス要因に加えて、10月下旬にはソマリア国軍と武装集団との間で激しい戦闘が勃発。多数の死者を出し、約10万人が避難を余儀なくされました。
気候変動への対応能力が最も乏しいとされる10カ国のうち9カ国はアフリカにあり、そのうち7カ国は武力紛争の影響も受けています。私は、気候変動対策資金のうち、情勢が不安定な地域を対象とした気候変動適応策への割り当てを増やして欲しいと思っています。二酸化炭素排出量を削減する努力も重要ですが、それに加えて、地域社会が気候の変化に適応できるようにするための行動が不可欠です。
「気候変動対策資金のうち、情勢が不安定な地域を対象とした気候変動適応策への割り当てを増やすべきです」──赤十字国際委員会 ぺーター・マウラー総裁
3. IT企業を巻き込んだ取り組み
デマやニセ情報、ヘイトスピーチは今に始まったことではありませんが、デジタル技術の活用で拡散に拍車がかかり、紛争激化、暴力や被害の拡大を招いています。
例えば、ネット上のヘイトスピーチが少数民族に対する暴力を誘発するなど、デジタル空間を超えて物理的な被害も発生しています。これは人道的な問題です。オンライン/オフラインでのハラスメントや誹謗中傷、脅迫による心理的・社会的被害は、迫害、差別、排除につながる可能性があります。
フェイスブックやツイッター、その他デジタルプラットフォームは、もっと規制を設けるべきでしょう。とはいえ、責任をこれらの企業だけに負わせるのは違います。各国政府や民間セクター、メディア企業、市民社会、そして被害を受けた人々が力を合わせて取り組み、責任ある行動をとるための原則に合意しなければなりません。今こそ、様々な関係者が参画するガバナンスが求められています。
4. 人間による制御の維持
人間が介在しなくてもターゲットを選択して攻撃することができる自律型兵器は、世界の戦場における算段を一変させます。このテクノロジーの飛躍は、火薬の発見と同様、戦争の方法を大きく変える可能性を秘めています。
サイバー操作もリスクのある分野です。複数の国は、物理的な軍事作戦と並行してサイバー戦を実行することを公式に認めており、武力紛争以外でサイバー操作をしている国もあります。その結果、病院や水・電気のインフラ、原子力や石油化学施設など、市民が必要とするサービスが被害を受け、機能しなくなりました。これらの事件は、敵対的なサイバー操作が人道的な影響をもたらす可能性がある、という恐ろしい現実を示唆しています。
自律型兵器やサイバー操作が社会にもたらしうる破壊力を、世界は理解しておく必要があります。このような技術の進歩に対する緊急かつ効果的な国際的対応も必要です。