紛争や貧困だけじゃない。2022年に取り組むべき人道上の6つの課題

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5. 長きにわたった戦いの後のインフラ再建


10年に及ぶシリアの紛争で、生活に必要不可欠な設備・施設が壊滅しました。一部の地域では発電量が70%低下。7つの都市に存在する浄水場をはじめ、生態系のサイクルを成す資源の損傷は、戦時下でなくても修復に数年を要する可能性があります。これらの施設が崩壊寸前であることから、ベーカリーでも死体安置所でも、ありとあらゆるところで混乱が生じています

シリアは決して特別なケースではありません。紛争が中所得国の貴重なインフラをいかに短時間で蝕むかということを、私たちは学ばなければなりません。ICRCのような人道支援組織は、水や公衆衛生、電気、医療施設、学校などの基本事業の崩壊を防ぐために全力で活動しています。時間が経つほど、その先には悲惨な結果が待っています。

私たちは、人道分野を超えて、協力者や資力、専門知識を結集させ、事にあたる必要があります。出資者たちが、命を救うための戦略的投資として重要なインフラ維持に関わることで、戦いが終わった後の復興が円滑に進む一助となることでしょう。

「ICRCのような人道支援組織は、水や公衆衛生、電気、医療施設、学校などの基本事業の崩壊を防ぐために全力で活動しています。時間が経つほど、その先には悲惨な結果が待っています」──赤十字国際委員会 ぺーター・マウラー総裁

6. 人道主義を超越して


情勢が最も不安定な場所で、最悪の事態を防ぐために人道支援があります。より大きな課題に対して永続的な解決方法を見出すには、手を差し伸べることができるすべての団体による体系的なアプローチが必要です。

地政学上の大規模な断層線が不安定な状況を生み出している今、私たちの各国に向けたメッセージは、「競争に時間を費やすのはやめて、協力しよう」です。アフガニスタンは悲劇的な一例です。現在、2200万以上のアフガニスタン人が、危機的または緊急レベルの飢餓に直面しています。

人道主義者だからこれらの問題解決に積極的に取り組む必要がある、というのは間違っています。私は、昨年来ずっと国際社会に対して、窮乏と絶望から人々を救うための画期的な解決策を見出してほしいと訴えてきました。これは2022年、またそれ以降も引き続き取り組まなければならない最重要課題に他ならないのです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Peter Maurer, President, International Committee of the Red Cross (ICRC)

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