ビジネス

2022.01.25

欧州に負けじと米が本気。西海岸の「脱炭素バブル」と3000兆円の効果

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しかし、スタートアップの育成環境が米国、シリコンバレーを中心に変化しつつあるという。木村氏は「スタートアップの初期及び成長期の育成において、従来の10年程度の満期や高いIRRにこだわらない新しいタイプのベンチャーキャピタルからの資金が提供されるようになってきている。彼らは短期の成果創出にこだわらないので、より長期目線で技術、ビジネスを育成することが可能である。また、設備型のスタートアップの商用化や量産化のフェーズでも、米国では出口としてのSPAC(特別目的買収会社)が機能し、巨額の資金が提供されるようになってきている。

資金面での環境充実に加え、ビジネスモデルの進化も注目に値する。ハードウェアにソフトウェアも組み合わせることによって、ソフトウェアで継続的に価値提供する部分の収益モデルをストック化するなど、将来の見通しがつけやすいモデルを構築する工夫もなされている。この工夫は、2021年にSPAC上場したEVチャージャーの会社などで見られる。」とエコシステムのプレーヤーがクリーンテックバブルの教訓をもとに進化を遂げていると分析する。

●チャージポイントの収益安定化に向けた工夫


チャージポイントのバランス
出所:チャージポイントSPAC上場資料

確かに、2021年にSPAC上場したCharge Point社の上場資料(上図)からも、従来の設備設置型で初期に売上が集中(Upfront)するモデルであったEVチャージャーのレベニューモデルを、ソフトウェアによる保守管理、運営管理によるストックモデル(Recurring)とのバランスを取るモデルへと変化させていることが分かる。

従来収益化の見通しが立たず、商用化、量産化の資金が得られなかった有望なスタートアップが、一定の期間での収益化の見通しを立てられるようになり、資金が供給されるようになってきたことは嬉しい変化だ。

最後に、木村氏は「米国、シリコンバレーは、クリーンテックバブルの教訓を活かし、気候変動イノベーションを達成するためのイノベーションエコシステムを構築しようとしている。気候変動に積極的に取り組む経済効果は3000兆円ともいわれる。気候変動を機会と捉えイノベーションを創出できるかは、これからの私たち一人一人、企業一社一社の行動にかかっている」と今回の気候変動イノベーションを取り巻く環境改善への期待とこの変化をチャンスと捉え行動を起こす重要性を語った。

地球規模の課題解決には、国を超えて協働することが欠かせない。米国、シリコンバレーの変化に学び、グローバルな視点を持って新たな一歩を踏み出そう。

文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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