●カーボンネットゼロに向けた新テクノロジー、イノベーションの必要性
既存のテクノロジーでは、ネットゼロの目標に必要な排出量の「65%」までは削減可能。出所:media-publications.bcg.com
ネット・ゼロ達成に欠かせないイノベーション
気候変動対応において、民間への期待、イノベーションに対する期待が高まる中、イノベーション推進の環境はどのようになっているのか。2050年までにネット・ゼロを達成するうえで、既存の技術とその延長により最大65%を削減できると推定されているが、残りの35%を達成するためには新たな技術的ブレークスルーが必要だ。グローバルにおける脱炭素・気候変動テックへの投資を見ると、2021年3Qまでで$30.8Bと過去最高を記録しており、大きな期待が寄せられていることがわかる。
●気候変動領域Techに関する資金調達額
出所:Pitchbook
注目のイノベーション領域について木村氏は、「ブレークスルーテクノロジーが期待を集めている。COP26で、世界経済の70%を占める40カ国が署名した、電力、運輸、鉄鋼、水素、農業の5セクターを対象にしたブレークスルーアジェンダで推奨されるEVの普及、グリーン水素の貯留、炭素排出をしない鉄鋼生産、カーボンキャプチャ―の技術などだ。また上記以外の領域では、炭素排出量の可視化や行動変容につながるサービス、サーキュラーエコノミーなどへの関心が高い」と現在のトレンドを語った。
クリーンテックバブルの二の舞となるのか
従来、特に設備型の気候変動スタートアップについては、商用化、量産化のフェーズで巨額の資金が必要となり、収益体質に至るまで長期間を要することから、投資家やステークホルダーにとって非常に難しい領域であるとされてきた。成果に結びつかず大量の資金が溶けてしまった2010年前後のクリーンテックバブルの二の舞になるのではという意見もある。例えば、太陽光パネル製造スタートアップのSolyndra社(2005年カリフォルニア創業)が、政府から5億3500万ドルの融資保証を受けたのち2011年9月に破綻し、約6億ドルの負債と従業員1100人が解雇されたことは、クリーンテックバブルの象徴的な出来事だった。